『五等分の花嫁』完結後も新作が作られ続ける理由 恋心を超えた五つ子の絆とは

 TVアニメ『五等分の花嫁*』が12月23日深夜に放送される。原作者・春場ねぎ監修の完全新作エピソードで、原作にない新婚旅行編が描かれた。筆者は映画館での先行上映で視聴したが、五つ子の設定がフルに活かされ5人の個性が光っており、なおかつヒロインとのラブコメ要素もあり構成に唸らされた。

『五等分の花嫁』の大ヒットが示す 「実写よりアニメ」の決定的なシフト

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 『五等分の花嫁』はハーレムラブコメとして描かれ「5人の中の誰かと結婚する」「全員同じ顔なので花嫁が誰なのかが分からない」という考察要素もあり高い人気を博した。原作はすでに完結しており花嫁が誰なのかも確定している中で、今回原作の後を描く新作が制作されている。

 通常ラブコメは、ヒロインが確定したところで終わることが多い。それにもかかわらず今回の新作が実現できたのは、衰えない人気の高さはもちろんのこと、ハーレムラブコメでありながら物語の根底に姉妹愛・家族愛があることが要因だろう。

 本作で描かれる五つ子たちは、家庭教師のアルバイトとしてやってきた主人公・上杉風太郎に対して恋心を抱いていく。五つ子たちは病気で亡くなった母親・零奈が言っていた「大切なのは5人でいること」という言葉を大切にして生きてきた。そのため、彼女らが1年生時に在籍していた高校で、四女・四葉だけが落第して転校を言い渡されてしまった際は、他の4人も四葉のために一緒に転校する決断をした。

 そんな強い絆を持つ姉妹だが、同じ相手に恋心を抱いてしまう。特にそれぞれ長女・次女・三女である一花・二乃・三玖の3人が風太郎に恋してからは、恋の駆け引きが激しくなり姉妹の関係がギスギスしてきてしまう。

 姉妹の絆と自身の恋心。その葛藤で姉妹同士激しくぶつかりあうさまを描いたのが、TVアニメ第2期で描かれたエピソード「シスターズウォー」である。

 京都への修学旅行を描いたエピソードで、各々がどうにか他の姉妹より風太郎に接近し距離を縮めようとする。そんな中で一花は「私だけを見てほしい」という気持ちの強さから、三玖に変装し恋の邪魔をしようとする。しかしその行動が他の4人にバレてしまい、姉妹関係を決定的に壊すことになってしまう。

 そんな一花に対して二乃は激しい怒りをぶつけつつも「あんたが選ばれる日が来ても、私は祝福したかった」と涙ながらに語る。また、二乃は恋に臆病になり、風太郎から距離をおいてしまった三玖に対して「冷静に考えなさいよ 五つ子よ あんたも可愛いに決まってんじゃん!」と、背中を押す発言をしている。

 二乃は「確かなのは誰よりも私が彼を好きだということ」と語るほど風太郎への想いが強い。三玖のことも恋のライバルとして見ていたため、自分の恋のことを考えるならこのような発言をするべきではない。つまり二乃は、自分の恋心と同じくらい姉妹のことを大切に思っているのだ。

 もちろん姉妹のことを大切に思っているのは二乃だけではない。四葉はずっと風太郎のことが好きだったが、自分が落第で姉妹に迷惑をかけた後ろめたさなどから、自分の恋心を抑え込み、一花や三玖の恋を応援する行動をとっていた。唯一恋の駆け引きに加わっていなかった五女の五月は、誰よりも母親の言っていた「5人でいること」を大切にしており、末っ子でありながら母親の役を担おうとその口調も真似していた。修学旅行以外でも常に5人の関係を気にしており、時には風太郎を姉妹から遠ざけようともした。

 修学旅行ではその後、姉妹たちが意図的に三玖と風太郎を近づけ、恋の応援をするかたちになる。二乃は風太郎と三玖が一緒にいる姿を見ることが耐えられなかったことから、一花のとった行動に一部理解を示す。一花も涙ながらに三玖に謝罪し和解したところで、修学旅行は終了する。恋愛絡みで姉妹関係がさらにギスギスする展開も考えられたと思うが、そうならなかったのは『五等分の花嫁』において、姉妹愛・家族愛の描写に多くの分量が割かれてきたからだろう。

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