『放課後カルテ』子役たちの功績 心身の病への向き合いが生み出した現代性と“現実感”

 個人的に秋ドラマは、2024年の中で最も粒揃いであると感じる。それぞれのドラマが、その作品が示すテーマの重要性を認識した上で、どう届けるべきかを試行錯誤していることが伝わってくる。『放課後カルテ』(日本テレビ系)もそういった熱い使命感を持つドラマの一つだろう。子供たちの心身の病にどう向き合うべきか、それらに向き合ったとき大人は何に悩むのか。今描くべき物語だという強固な意思が感じられる。

 このテーマを描く上で何よりも重要なのは、それぞれの事情を抱える子供たちを演じる子役たちの演技力だろう。第1話では、ナルコレプシーにより激しい眠気に襲われてしまう野咲ゆき(増田梨沙)の涙ながらの訴えにも、第2話では冴島啓(岡本望来)による必死さと怯えが混じる救命活動や、牧野(松下洸平)への憤りにも、視聴者を画面に引きつける引力があった。第4話では、水本羽菜(小西希帆)の周りを傷つける自身の言動に自分で傷ついてしまう様子が描かれた。言葉に頼らず、羽菜の抱える葛藤を表情筋の緊張や目つきの変化などで繊細に表現する小西の演技は素晴らしく、羽菜の内面イメージを見せる演出や的確に回想を織り交ぜた構成、情緒がありつつ簡潔なセリフなどの相乗効果により、心の深いところまでテーマを届けるストーリーになっていた。

 また、各話でメインキャラクターとなった子供が、心身ともに元気になった状態で牧野や篠谷(森川葵)と関わる様子も見られ、一人ひとりの生徒たちの地続きの物語として楽しめるのも魅力の一つだろう。第7話では、これまでも登場していたクラスの中心人物・三本れいか(畠中一花)をメインとし、性格の違いによるコミュニケーションのすれ違いとその解決にも触れていった。女子生徒同士のいざこざの独特の空気感、そこに茶々を入れる男子の描写がとてもリアルで、子役たちがこの作品に与えている現実味、それを見せられるだけの演技力の高さを実感した。

 本作に出演している子役たちは、500人規模のオーディションを経て選抜されている。中には、すでに教育番組のメインキャストを経験した子やミュージカル、朝ドラ出演などを経験している子も。観るたびに、こんなにも心に強く訴えかける芝居ができる子供たちがいるのかと新鮮に驚かされる。子役たちが、今持てる力の全てを出して必死に取り組み、それを大人が温かく支えることで、才能が開花する瞬間をリアルタイムで楽しめるという点でも『放課後カルテ』は、ありがたいドラマと言えるだろう。

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