『DAIMA』の前に必見『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』 原点を感じるハチャメチャ感

『スーパーヒーロー』は『DAIMA』前に必見

 そうした展開を合間で繋いだのが、悟天でありトランクスであり18号でありクリリンだ。特にクリリンは、始めのうちは人間としての限界を意識して戦いから距離を置いていたが、最愛の18号が参戦したからか、いてもたってもいられなくなって戦いに飛び込んでいく。疲れ果ててよろけるクリリンを、18号がそっと支える状況に、2人を推しているファンは喝采を贈りたくなるだろう。

 ピッコロにも見せ場があり、悟飯はもちろんその場では最強といった戦いぶりで、『ドラゴンボール』シリーズのファンが期待する激しくて迫力たっぷりのバトルを楽しませてくれる。そこに加わる『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』オリジナルのガンマ1号と2号の戦いぶりが、アメリカンコミックスのヒーローたちのような気高さとスマートさを漂わせる。

 レッドリボン軍の誘いに乗ったヘドによってカプセルコーポレーションとその一味は悪だと教えられていた2人だが、そこには悪をなそうといった気持ちは微塵も存在していない。どこまでも正義を貫こうとする人造人間たちを神谷浩史と宮野真守が演じていて、主人公役を多くこなしてきた2人のヒーローぶりをこれでもかと浴びることができる。

 レギュラー陣は、『ドラゴンボール』のアニメが始まった頃からのメンバーが引き続き演じているから安心感しかない。悟空だけでなく悟飯と悟天を演じる野沢雅子は強くてひょうきんな悟空と、どこか頼りなさそうな研究者でありながら、パンの危機には全力を開放する悟飯とで、それぞれのキャラクター性をしっかりと感じさせてくれている。ピッコロを演じる古川登志夫も、数々の戦いを経てすっかり落ち着いた良いおじさんといった雰囲気を漂わせている。

 クリリンの田中真弓は、『ONE PIECE』のルフィ役が有名になり過ぎてはいても、しっかりとクリリンという強くて優しい人間を聞かせてくれる。ブルマも亡くなった鶴ひろみを引き継いだ久川綾が、テレビシリーズの『ドラゴンボール超』や『ドラゴンボール超 ブロリー』から馴染んできた演技で、ちゃっかりとした女性実業家を感じさせてくれる。まさかドラゴンボールをそんな願いに使っていたとは! 驚き呆れる展開だが、そこも含めてブルマらしさが出ている演技だ。

 皆口裕子が演じるパンは、生まれて間もないの『ドラゴンボール超』の頃や、もう少し年齢が上がった『ドラゴンボールGT』の頃とは違った、3歳児ならではのかわいらしさが炸裂していて誰もが保護してあげたいと思うだろう。もっとも、手を出そうとして反撃されたり、逆に懐かれてぶつかってこられたりしたら、普通の人間なら吹き飛ばされるから要注意。そうした変わり目にあるキャラクター性を味わえるという面からも、『スーパーヒーロー』は楽しめる映画だ。

 アニメの『ドラゴンボール』シリーズはこの後も続いていて、10月11日からテレビシリーズ最新作となる『ドラゴンボールDAIMA』の放送がスタートする。小さくなった悟空が如意棒を持って大暴れする予告編の映像からは、テレビシリーズの最初期に重なるワクワク感が漂っている。

 クリリンやベジータやピッコロといったレギュラー陣は絡んでくるのか。小さくなった界王神や新キャラクターのグロリオ、パンジ、ゴマー、デゲス、ドクター・アリンスの役割は? いろいろと想像が浮かぶが、ひとつ感じられるのは、初期『ドラゴンボール』のわちゃわちゃとした感じが詰まっていそうな点。それは、『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』からも感じられたことで、『DAIMA』を前に本作を観て、気持ちを慣らしておく手もありそうだ。

■公開情報
『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』
フジテレビ系にて、10月3日(木)21:00~23:08放送
出演:野沢雅子、古川登志夫、久川綾、堀川りょう、田中真弓、草尾毅、皆口裕子、入野自由、神谷浩史、宮野真守、ボルケーノ太田、竹内良太
原作・脚本・キャラクターデザイン:鳥山明
監督:児玉徹郎
作画監督:久保田誓
音楽:佐藤直紀
美術監督:須江信人
色彩設計:永井留美子
CGディレクター:鄭載薫
配給:東映
©バード・スタジオ/集英社 ©「2022 ドラゴンボール超」製作委員会

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