アニメファンが『虎に翼』で初めて朝ドラを完走 “しんどすぎない”脚本が観やすさの鍵に

『虎に翼』がアニメのように親しみやすい理由

 とはいえ、寅子の日常が当時の時代を準えながらも“しんどすぎない”リアリティのさじ加減があったからこそ、私のようなライトなドラマファンにも本作は構えずに観ることができたのかもしれない。シリアスな場面は主に法廷や裁判所が絡む展開に限られ、寅子の日常では、周りの人々が一生に関わる苦しみを抱き続けるようなケースはほとんどない。みなそれぞれの場所で生きる意義(それが女性の社会進出という枠組みに限らずとも)や幸福を見出し、前を向いて生きている。

 本作が現実の法律問題を扱いながらも、どこかアニメのような親しみやすさを醸し出しているのは、先ほど触れた寅子の大袈裟でコミカルなリアクションに加え、法廷シーン以外の日常パートがそうした印象を生み出しているのだろう。

 その集大成とも言えるのが、最終話だ。平成11年を舞台に、ヒロイン寅子が幽霊として登場する展開にはさすがに驚かされたが、寅子の霊が朝からラジオ体操をしたり、優未(川床明日香)を見守る姿には、思わずクスッと笑ってしまった。エンドロールでは、これまで寅子を見守ってきた人たちが大集合。半年間共に歩んできたキャラクターたちが次々と登場し、それぞれの姿に思わず目頭が熱くなる。彼らへの愛着が、これほどまでに深まっていたことに気づかされた瞬間だった。

 初めての朝ドラ完走をこの作品で果たせたことを、心から嬉しく思う。朝ドラ初心者だった筆者にとって、『虎に翼』は理想的な入門編となった。寅子たちと共に笑い、考え、時に涙するーーそんな贅沢な時間を過ごせたことへの感謝とともに、新たな朝ドラとの出会いを心待ちにしている自分がいる。

■配信情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
NHKオンデマンド、NHK+にて配信中
出演: 伊藤沙莉、岡田将生、土居志央梨、平岩紙、戸塚純貴、川床明日香、竹澤咲子、井上祐貴、尾碕真花、石橋菜津美、円井わん、木場勝己、矢島健一、松山ケンイチ、小林薫
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか

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