『虎に翼』で広がる“支援の輪” 朋一の左遷は桂場の政治権力への対抗の一手か

『虎に翼』朋一の左遷は政治権力への対抗か

 一方、美位子(石橋菜津美)の裁判が二審の東京高裁で実刑判決となったのを受け、よね(土居志央梨)と轟(戸塚純貴)は最高裁に上告。航一(岡田将生)ら最高裁調査官が受理するか否かの調査を進める間、二人は別の依頼に取りかかる。「お二人がたくさんの方を救う姿を見ていると元気になるわ」と気丈に振る舞う美位子を見て、よねが思い出すのはかつての自分だ。よねもまた実父から身売りされそうになり、家を飛び出した先でマスターの増野(平山祐介)に雇ってもらった。

 香淑/香子(ハ・ヨンス)は夫の汐見(平埜生成)とよねの事務所で原爆被害に遭った外国人への支援を始めることを決意。二人も多岐川に助けられたように、誰もが誰かが手を差し伸べてくれたからこそ今がある。そんな彼らが、今度は自分が困っている人のために手を差し伸べ、力の限りを尽くそうとしている姿に胸が熱くなった。

 そんな中、熱心に若手の仲間たちと勉強会を行っていた朋一(井上祐貴)が最高裁事務総局から家裁に異動を命じられる。その直前、政民党幹事長の寒河江(外山誠二)が最高裁を訪れ、裁判所への調査特別委員会の設置について桂場(松山ケンイチ)に圧力をかけていた。気になるのは、「最近のおたくらは、とても司法の公正を守っているとは言い難いんじゃないのか」「最近じゃ若い裁判官が、傾いた考えを持って現体制変革を目指して、作為的な行動を起こしているとも聞く」という言葉。それを受け、司法の独立を何よりも重んじる桂場が、政治権力の介入に先手を打つ形で朋一らリベラルな思想を持つ若手裁判官たちを左遷した可能性もある。

 最高裁長官の就任祝い以来、「笹竹」にも姿を見せていないという桂場。難しい表情は元からだが、それでも以前は親しい人間の前では柔らかい印象を覗かせていたのに対し、今は明らかに影を落としていて誰も近づけさせないオーラがある。その微妙な違いを巧みに表現する松山ケンイチの演技には目を見張るが、いつものお団子を美味しそうに食べる桂場の姿を早く見たいものだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、岡田将生、土居志央梨、平岩紙、ハ・ヨンス、平埜生成、戸塚純貴、平山祐介、名村辰、松川尚瑠輝、川床明日香、井上祐貴、川島潤哉、外山誠二、石橋菜津美、中山祐一朗、和田庵、池田朱那、沢村一樹、滝藤賢一、松山ケンイチ、小林薫
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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