『ONE PIECE』ワノ国編から変化したアニメ作画 『THE ONE PIECE』や実写版の影響も

『ONE PIECE』ワノ国編で考えるアニメ作画

 いずれにしても、テレビアニメ『ONE PIECE』が最近になって強く作画を意識するようになったことは確かだ。理由として取り沙汰されたのが、『呪術廻戦』や『鬼滅の刃』といった凄まじい作画力でアクションシーンを見せるアニメの存在だ。これらを制作したMAPPAやufotable、『僕のヒーローアカデミア』シリーズでハイレベルのアクションを見せ続けるボンズなどが作画力を売りに作品をヒットさせ続けている。こうした流れに老舗の東映アニメーションも適応する必要があったのかもしれない。

 日本でファンの子供たちに観続けてもらい、おもちゃを買ってもらい続けることを目的に立ち上げられることが多い日本のキッズアニメの一角に、始まった頃の『ONE PIECE』テレビアニメは立っていた。放送が始まって今年の10月で25周年。作品のネームバリューが高まり、観る人たちの世代も広がり、観られる場所も全世界になっている状況で、テレビアニメも子供から大人まで、それも世界中の人たちを相手にしなくてはならない。

 そこに、『鬼滅の刃』や『進撃の巨人』が高い作画力も含めて人気になっているなら、『ONE PIECE』としてもグレードアップをしていかなくてはならない。そうした意識もあって、作画力の底上げが図られていったのかもしれない。

 テレビアニメ『ONE PIECE』はこの後も、ルフィの祖父のモンキー・D・ガープと青キジことクザンの激突が待っている。原作の漫画にすでに描かれた「エッグヘッド編」での麦わらの一味と海軍などとの大激突が、圧巻の作画で見られるはずだといった期待もある。東映アニメーションとしても応えざるを得ないだろう。

 今はさらに、『進撃の巨人』『SPY×FAMILY』を手がけたWIT STUDIOが、原作漫画を最初からアニメで描き直す『THE ONE PIECE』が動き始めている。自分たちも頑張ろうといった意識に溢れていて当然だ。そしてWIT STUDIOの方も、先を行くテレビシリーズの頑張りを眺めつつ、自分たちなりの『ONE PIECE』を作っていこうと検討を続けている。

 肥塚正史監督やキャラクターデザインと総作画監督を務める浅野恭司が参加したトーク映像によれば、『THE ONE PIECE』はルフィたちが暮らしている世界のバックグラウンドが、しっかりと想定されて世界観を濃密なものにしているようだ。(※)本格的な制作に向けて描かれたイメージボードには、市場に並ぶ魚や酒場で騒ぐ客たちが描かれ、誰かが生きて暮らしている世界なんだといった印象を持たせる。それがルフィやロロノア・ゾロやナミ、ウソップ、サンジといった面々に実在感を与え、より強い親近感を抱かせることになりそうだ。

『THE ONE PIECE』Production Notes Vol.1 ~Staff Interview~

 テレビアニメ『ONE PIECE』が怒濤の展開に視聴者を巻き込んで進んでいくなら、『THE ONE PIECE』は作品の世界に観る人を引き込んでいろいろと体験させてくれそう。そうした2つのアニメに触れつつ、背景のディテールがとことんまで作り込まれたNetflixのドラマシリーズを観て、自分たちが生きている世界が『ONE PIECE』の世界と地続きになっているような感覚を味わう。すべての中心にあり先頭に立つ原作の漫画は次々に未知の扉を開いて読者を驚きへと誘う。

 それぞれの『ONE PIECE』が作り出す空気が、宇宙を『ONE PIECE』で染め上げる。

参考
※https://www.youtube.com/watch?v=uB6WQYbgQzQ

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