井之脇海主演『ピアニストを待ちながら』ポスター&予告編 七里圭監督過去作の再上映も

『ピアニストを待ちながら』ポスター&予告編

 10月12日よりシアター・イメージフォーラムほかにて全国公開される井之脇海主演映画『ピアニストを待ちながら』のポスタービジュアルと予告編が公開された。

 本作は、2024年がデビュー20周年となる七里圭監督が、世界的な建築家・隈研吾が手がけた村上春樹ライブラリーの館内で全編撮影した人間ドラマ。2022年10月に早稲田大学にて45分版が初披露、2023年1月に舞台挨拶付きで特別上映されたが、さらに61分の劇場公開版として生まれ変わった。

 真夜中の図書館で目を覚ました瞬介は、なぜか外に出られぬまま、旧友の行人、貴織と再会する。いつまでも明けない夜、学生時代の演劇仲間だった3人は、かつて上演できなかった芝居の稽古を始める。それは行人が作演するはずだった『ピアニストを待ちながら』であった……。

 瞬介を演じたのは、9歳から役者のキャリアをスタートさせ、大学で映画制作を学んだ井之脇。本作では吹き替えなしでピアノの演奏も披露している。瞬介の大学の同級生・貴織役を『わたし達はおとな』、『福田村事件』などの木竜麻生、瞬介の友人で演劇青年の行人役を『ミスミソウ』などの大友一生が演じた。そのほか、謎めいた存在感を持つシングルマザーの絵美役で『王国(あるいはその家について)』の澁谷麻美、中年男の出目役で『夜明けのすべて』の斉藤陽一郎が出演する。

 公開されたポスタービジュアルは、グランドピアノを弾く井之脇の後ろ姿と木竜と大友の横顔の写真をバックに、世界的建築家の隈が手がけたエントランスの曲線を模したタイトルロゴと、木材をアーチ状に配したトンネル状の大屋根の一部が大胆にレイアウトされている。

『 ピアニストを待ちながら 』予告編

 あわせて公開された予告編には、井之脇が奏でるピアノの旋律にのせて、“出られない図書館”の中で舞台の稽古をするキャラクターの姿や、「なぜ彼らは出て行かないのか?」という言葉が映し出され、本作の迷宮的世界観が凝縮されている。

 そして、早稲田大学国際文学館開館3周年と本作の公開を記念し、10月8日に物語の舞台となった村上春樹ライブラリーにて七里監督とアメリカ文学研究者・翻訳家の柴田元幸による“映画と文学”にまつわる対談イベントが開催されることが決定した。

 また、9月28日よりイメージフォーラムにて、七里監督のデビュー作『のんきな姉さん』と、15年間毎年上映が繰り返された作品『眠り姫』の再上映も決定。『のんきな姉さん』は9月28日から10月4日まで、『眠り姫』は10月5日から10月11日まで、連日21時より1週間限定でレイトショーされる。

 さらに、本作を一足先に鑑賞した演劇作家・小説家の岡田利規、映画評論家の荻野洋一、脚本家・演出家の関田育子からコメントも到着した。

コメント

岡田利規(チェルフィッチュ主宰/演劇作家/小説家)

図書館という空間が演劇によって異化されるのを、この映画を見る者は目の当たりする。そこで演劇のリハーサルが繰り広げられること。しかも真夜中に。それによってそこに結界が生じる。そこがまぎれもなく異界になる。劇場でない空間が演劇によってまざまざと異化されるさまが、そのような演劇の上演そのものに立ち会う以上にそれを捉えた映画、つまり、この「ピアニストを待ちながら」という映画を見ることによって、よりまざまざと味わうことができるように思われるのは、しかし、なぜなのだろう?

荻野洋一(映画評論家/番組等構成演出)

死の舞踏のフィニッシュが永遠に先送りされる。七里圭は現代映画をバロック化させた。ノイズと風景の反復によって、かつてはここに誰かがいたはずなのにとブツブツ唱えながら「誰(た)が袖」を素描し続ける。「誰が袖」とはエンプティショットであり、七里映画にあっては、誰かが写っているショットも、本質的にはエンプティショットなのだ。エンプティショットがリフレインされ、延滞され、フットマークが貼り直される。

関田育子(ユニット[関田育子]代表/脚本家/演出家)

『ピアニストを待ちながら』は、現今の社会を意識した実験的な作品であると同時に、遥か昔から問い続けられてきた「存在」の問題に、ある視座をもって応答する作品だと感じた。しかし、観客の目に映るのはユーモアに溢れたシーンの数々であるために、肩の力を抜いて鑑賞するのが得策です。笑ける余白のある時間を過ごしたい方におすすめです!

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■公開情報
『ピアニストを待ちながら』
10月12日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
出演:井之脇海、木竜麻生、大友一生、澁谷麻美、斉藤陽一郎
監督・脚本:七里圭
音楽:宇波拓
プロデューサー:熊野雅恵
制作・配給:合同会社インディペンデントフィルム
2024年/日本/カラー/61分/ヨーロピアンビスタ/5.1ch/DCP 
©合同会社インディペンデントフィルム/早稲田大学国際文学館
公式サイト:https://keishichiri.com/pianist

■イベント情報
早稲田大学国際文学館開館3周年×七里圭監督
『ピアニストを待ちながら』公開記念イベント
~「物語を待ちながら」 映画の物語と文学の物語を巡って~
『ピアニストを待ちながら』劇場公開記念トーク・柴田元幸×七里圭監督
10月8日(火) 開場18:30、開演19:00、終演20:30
場所:早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)
定員:50名

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