『海のはじまり』“忘れがたい瞬間”を映し出した神回に 目黒蓮と有村架純が見せた涙の演技

 水季が出産の岐路に立った時、その背中を優しく押した弥生の言葉。その温もりが、皮肉にも今、弥生自身を包み込む。ついに、弥生は夏に秘めていた本心を吐露する。「2人のことは好きだけど、2人といると自分が嫌いになる」と、複雑な想いを明かす。最後に夏の部屋に響いたのは、「海ちゃんのお母さんにはなれない。月岡くんとは別れたい」という、覚悟と痛みの滲んだ弥生の言葉だった。

 人生の分岐点に立たされた2人の選択に、自分の気持ちに正直に生きることの大切さを、改めて考えさせられる。しかし、海を選ぶ夏の姿は、弥生が愛している夏の姿そのものだったのかもしれない。「どちらも選べない」と嘘をつけずに、「どちらかしか選べないなら海を選ぶ」とはっきり言ってしまう、残酷なほどの不器用な正直さがここにも表れていた。

 また、『silent』(フジテレビ系)で世田谷代田駅の“あのベンチ”が人気の撮影スポットとなったように、今回は経堂駅のホームのベンチでの対話が心に残る名シーンとなった。終電間際のホームで向かい合う2人。どこにでもいそうな恋人同士に見えるのに、好きなまま別れなければならない現実が、その姿をより一層切なく映し出す。静かな駅のホームに響く楽しそうな2人の笑い声が、こちらの胸を強く締め付ける。

 目黒蓮と有村架純が見せる涙の演技の素晴らしさは言うまでもないが、エンディングで流れるback numberの「新しい恋人たちに」との絶妙なマッチングが心を揺さぶった第9話の後半。特に一人取り残された夏が力なくホームを歩く中で「誰の人生だ」という歌詞が繰り返される場面に、私たちのそれぞれが生きなければならないのは、当然ながら“自分の人生”なのだと痛感させられる。

 あの終電までの束の間に凝縮されていたのは、自分の人生を海と共に歩む決意をした夏の、“弥生の恋人”としての最後の時間だ。「月岡夏」から「海のパパ」へ変わろうとしている夏は、最後の電車を見送りながら、何を思ったのだろうか。

■放送情報
『海のはじまり』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:目黒蓮、有村架純、泉谷星奈、木戸大聖、古川琴音、池松壮亮、大竹しのぶほか
脚本:生方美久
演出:風間太樹、髙野舞、ジョン・ウンヒ
主題歌:back number「新しい恋人達に」(ユニバーサル シグマ)
プロデュース:村瀬健
音楽:得田真裕
制作・著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
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