『キングダム 大将軍の帰還』大沢たかお×吉川晃司が咲かせた“戦の華” 人智を超えた激戦に
一騎討ちが終わり、王騎将軍と信は、一頭の馬に同乗して戦場を進む。天下の大将軍と一介の百人将が同乗している理由は、本編で確認してほしい。ただこのシーンの2人は、まるで父と子のようである。孤児だった信にとって、王騎将軍は父のような存在だったのではないか。馬上で将軍としての心構えを教えられ、「将軍の見る景色」を見せつけられた信は、決意を新たにする。
第1作のレビューを書く際、筆者はあえて山﨑賢人演じる信のことを「クソザコ」と書いた。(※2)だからこそ、この4部作を通しての信の成長、特に顔つきの変わりようには驚かされる。見た目が大きく変わったわけではないが、内面の成長が透けて見える。王騎はじめ将軍たちの戦いを目の当たりにして、多くを学んだのだろう。
単独で暴れていれば良かったザコ時代と違い、百人将となり仲間の命を預かる立場となった。死んでいった仲間の命も、背負って戦っていかねばならない。ここまでは大いなる序章であり、ここから、信にとっての「天下の大将軍への道」が始まる。
……と思っていたが、「シリーズ最終章」との文言をチラホラ目にするし、スタッフ・キャストのインタビューを読んでも、どうやら今作で一区切りのようである。許すまじ。
今作は、『鬼滅の刃』で言うところの『無限列車編』である。言うなれば、王騎将軍は煉獄杏寿郎だ。今作のエピソードは、主人公の覚醒からのさらなる成長を促すための、物語前半の大きな山場ではある。だが、物語全体のクライマックスではない。原作単行本で見ても、現在72巻まで刊行されているうちの16巻までのエピソードでしかない。
まだまだ続きを観たいところではある。戦に出ないがために出番が少なくなっていった嬴政(吉沢亮)や、やっと本来の強さを見せた騰のファルファル、「そもそもこいつは何だったんだ!?」の万極(山田裕貴)らのこれからも、見届けたいところである。だが我々のこの無責任な願望が、山﨑賢人の肉体にさらなる負担を強いてしまうことも事実だ。彼には、『ゴールデンカムイ』シリーズの杉元佐一役という大任がまだ残っている。不死身の杉元と並行して童・信を演じるのは、さすがの山﨑賢人でもキャパオーバーだろう。山﨑賢人にも、嬴政にとっての漂がいればと思う。
参照
※1. https://www.otsuka.co.jp/ulos/questions/2024cp_interview/
※2. https://realsound.jp/movie/2024/06/post-1703419.html
■公開情報
『キングダム 大将軍の帰還』
全国公開中
出演:山﨑賢人、吉沢亮、橋本環奈、清野菜名、玉木宏、佐藤浩市、小栗旬、吉川晃司、大沢たかおほか
監督:佐藤信介
脚本:黒岩勉・原泰久
音楽:やまだ豊
主題歌:ONE OK ROCK 「Delusion:All」(Fueled By Ramen / Warner Music Japan)
原作:原泰久『キングダム』(集英社『週刊ヤングジャンプ』連載)
配給:東宝
©︎原泰久/集英社 ©︎2024映画「キングダム」製作委員会
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