堀家一希、『虎に翼』梅子の次男・徹次はハマり役の予感 葛藤を抱えたまなざしの“巧さ”

堀家一希、『虎に翼』徹次はハマり役の予感

 また2017年のドラマ、『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(カンテレ・フジテレビ系)第3話にゲスト出演した際の、テロ組織に利用され、議員の襲撃に手を染めてしまう若者・藤崎正一という役は特に忘れがたい。

 父親の仇を討ちたいがあまり兄弟でテロ事件に加担し、壮絶な最期を迎えるこの役は、たった1話だけのゲストながら筆者も今も記憶しているほど強烈だった。

 彼が20歳のときの役で、ガンアクションがあり、さらに鍛え上げている小栗旬と西島秀俊とのアクションシーンもあるなど、プレッシャーの大きい役だったと思うが(実際緊張したり、クライマックスでは精神的にも追い詰められたらしい)、思いつめた表情は、純粋がゆえに極端な行動に走る若者そのものだった。(※2)

 そして2023年の映画『世界は僕らに気づかない』の主役・純悟役で初主演を果たし、演技力の高さを知らしめた。

 純悟は母親がフィリピン人で、父親は日本人だけれど物語の中盤以降まではどこの誰だかわからない。さらに純悟はゲイのため、幼い頃からいじめを受けたり、周囲にいまひとつなじめない。恋人はいるが関係がうまくいかなくなってきていて、未来に希望を持てず投げやりになっている。

 ……と、実際は日本人で、本人いわく優しい両親に育てられてきたという、素の堀家一希とは大きくかけ離れた環境にいる役のはずだが、純悟の説得力は信じられないくらい高かった。

 純悟役は当て書きであり、10代特有のいら立ちや煩悶はもちろん、自分の生い立ちとゲイだというマイノリティーとしての引け目、恋人に去られ、母親は勝手に再婚話を進め、どこにも出口がないように思える閉塞感の中で、泣き出し叫び出してしまう気持ちが、表情からもまなざしからも伝わってきた。

 この作品は、2022年の大阪アジアン映画祭で“来るべき才能賞”を、東京フィルメックス新人監督賞では準グランプリを獲得。他にも国内外の多くの映画祭で高い評価を得たが、監督の手腕はもちろんだが、堀家一希の演技のすばらしさが大きく貢献したことは間違いない。

 そんな彼の朝ドラ初出演。生きる気力をなくしている大庭徹次を彼がどう演じるのか、期待しかない。

参考

※1. http://www.cinema-life.net/interview/i2112/
※2. https://deview.co.jp/News?am_article_id=2089767

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、岩田剛典、戸塚純貴、松山ケンイチ、小林薫
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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