天海祐希が向き合う“職人気質”な役作り 『Believe』で周囲を包み込む“母性”を体現

天海祐希が向き合う“職人気質”な役作り

 天海を見ていると役者という仕事は案外地味で、職人のようなきめ細かさやこだわりが求められる職業なのではないかと思えてくる。

 天海は台詞の変更について「前日までなら受けつけます」と『川島明の芸能界(秘)通信簿』(フジテレビ系)で話していた。「当日に渡されると、シーンの理解してきているものが変わる。前日までなら修正がきく」という理由であるが、この発言は一つ一つ丁寧に、こだわりをもって1つのものをつくり上げる熟練の職人を彷彿とさせる。

 とはいえ、天海は台詞覚えに苦手意識があるようだ。台本に書かれた台詞を手で書き写さなければ覚えられないとよく話している。また、撮影期間中は台本を持ち歩くことも多いと過去に話していた。芸能界には台本を一度読んだだけでほぼすべて覚えられるような天才型もいるが、天海はそういうタイプではなさそうだ。

 天海自身はファンや視聴者に自分の苦労話をするよりも、作品を観た思い出などを大切にしてほしいと考えている。しかし、人間は苦労せずに成功した人よりも悩み、苦しんだ代償としてきらびやかに輝く人に感情移入し、惹かれる生き物である。本人が苦労をあまり語らなかったとしても、凛々しさや鍛え抜かれた精神力、苦労を知っている者の口からしか出てこないだろうふとした言葉、演技の深みなどから、これまで背負ってきたものの重さや苦労は感じ取れるものだ。天海の魅力に気づいている人たちは、彼女のこうした部分を無意識のうちに感じ取っているのだろう。そして、自分も頑張ろうと思えるのだ。

 天海のプライベートは彼女自身しか知らないことだが、自らの口から度々語られるようにシンプルなものだと筆者は思う。出不精で外出を好まず、お店の開拓にも後ろ向き。洋服を買うことにもさほど関心がなく、お金はあまり使わない。好きな食べ物は駄菓子で、自炊もする。

 また、彼女はSNSを今時めずらしいことにしていない。ファンは彼女と同世代の女優がプライベートをInstagramで垣間見せる姿をうらやましく思うこともあろう。しかし、天海が何よりも自分の役割だと考えることは「よい作品を届けること」「チケットを購入してくれた人に作品で報いること」なのだ。

 天海は新型コロナウイルス感染対策の自粛モード下、『薔薇とサムライ2-海賊女王の帰還-』と『レイディマクベス』で主演を務めた。2作品あわせて100を超える公演数であったが、一公演も穴を空けることはなかった。いずれの作品においても観客に生きる気力や感動を与えたことは確かだ。これぞまさに、天海の役者道である。

 天海は自分の中で大切なものとそうでないものを見極め、表面的な価値にまどわされず、自分が「信じる(believe)」道を貫いている。他責思考が根付き、誰を信じたらよいのか分からない現代社会だからこそ、自分を信じ、自分で決めた道をしっかりと歩く彼女の姿を見習いたい。

■放送情報
『Believe-君にかける橋-』
テレビ朝日系にて、毎週木曜21:00~21:54放送
出演:木村拓哉、竹内涼真、山本舞香、一ノ瀬颯、北大路欣也、上川隆也、斎藤工、小日向文世、天海祐希
脚本:井上由美子
音楽:林ゆうき
エグゼクティブプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:都築歩(テレビ朝日)、髙木萌実(テレビ朝日)、松野千鶴子(アズバーズ)
監督:常廣丈太(テレビ朝日)
樹下 直美(アズバーズ)
制作協力:アズバーズ
制作著作:テレビ朝日
©︎テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/believe/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる