『ブルービートル』はヒーロー×ファミリードラマの傑作 新生DCUに再登場の可能性も

『ブルービートル』新生DCUに再登場の可能性

 ストーリーはシンプルというか王道のヒーロー誕生もの。ひょんなことから、エイリアンの作ったスカラベ“カージ・ダ”に寄生されてしまった青年ハイメ・レイエスは危機が迫ると全身が青いアーマーで覆われ、超人ブルービートルになります。早くからこのスカラベに目を付け軍事利用を企んでいた悪徳大企業は、ハイメからブルービートルの秘密を奪おうとします。かくしてハイメと悪徳企業の戦いが始まるのですが、主人公の運命に彼の家族が絡んできます。ラテン系の彼らはとにかく家族の結束が強い。ハイメ対悪徳企業は、レイエス家対悪徳企業の大バトルとなります。製作陣によれば、“もしピーター・パーカーがラテン系だったら、自分がスパイダーマンであることを家族に隠すことなんてできない”という発想でこのハイメと家の物語を考えたそうです。

 ヒーローになったカツオを家族全員で応援する磯野一家みたいな感じで、ここが他のヒーロー映画にはない痛快さであり温かみなのです。特にハイメのおばあちゃんがCOOL!

 『ブルービートル』で描かれる世界には、劇中にその姿は直接的に出てきませんが、スーパーマンやバットマン、フラッシュもいることがわかります。主人公ハイメは大学を卒業して実家に戻ってきたという設定ですが、最初のほうのシーンで、彼はゴッサム・ロー(ゴッサム大学の法律学科)の服を着ています。ゴッサムというのはバットマンが活躍する街ですよね。

 また、彼の住むパルメラ・シティにACEケミカル(コミックではジョーカー誕生のきっかけとなった会社)、レックス・コープ(スーパーマンの宿敵レックス・ルーサーの会社)のビルがあることがわかります。TVで流れるスペイン語のニュースの中で、バットマンの正体であるブルース・ウェインの名が出てくるし、フラッシュの名も会話の中で出てきます。ビッグ・ベリー・バーガーというハンバーガー店の箱が重要な小道具になりますが、このハンバーガーはDCコミックの世界に存在する(TVドラマ版『アロー』『ザ・フラッシュ』にも登場の)架空のハンバーガー屋さんです。また、冒頭でスカラベが地球に来る際、緑色の光が絡んできますが、これはDCの宇宙ヒーロー、グリーン・ランタンの存在を示唆しているようです。コミックではスカラベを開発したのはリーチと呼ばれる種族ですが、彼らは古来よりグリーン・ランタンたちと戦っていたのです。

 本作を観れば、ブルービートル/ハイメ・レイエスのファンになること必至、彼の活躍をもっと観たくなることでしょう。ジェームズ・ガンは本作について好意的であり、この映画をDCEUと切り離して考え、ブルービートル/ハイメ・レイエスはDCUの住人である的な発言をしたそうです。確かに本作はバットマンなどの言及はありますが、セリフの上で触れられるだけでDCEU版の彼らが画面に登場するわけではないので、DCEUとは異なるDC世界の話という解釈は十分成り立ちます。

 従って、これから先ガン監督が仕掛けるDCUに、ブルービートル/ハイメ・レイエスが何らかの形で出てくる可能性大なのです。コミックではブルービートルは駆け出しのヒーローで先輩ヒーロー(スーパーマンやバットマン)から小僧扱いされたりもします。今後DCUの中でブルービートルと他のヒーローたちの掛け合いをぜひ観てみたいですね。

■配信情報
『ブルービートル』
Netflixにて、5月29日(水)配信スタート
出演:ショロ・マリデュエニャ、ブルーナ・マルケジーニ、アドリアナ・バラーサ、ダミアン・アルカサル、ラオール・マックス・トゥルヒージョ、スーザン・サランドン、ジョージ・ロペス
監督:アンヘル・マヌエル・ソト
脚本:ギャレス・ダネット=アルコセル
製作総指揮:ウォルター・ハマダ
2023年/アメリカ/127分
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