『光る君へ』玉置玲央の道兼は序盤の紛れもないMVP “悪人”が最期に得た愛とやすらぎ
一度は道兼の意を汲み、その場を離れた道長だったが、孤独に笑った後、激しく咳き込んで苦しむ道兼を放っておくことはできなかった。いてもたってもいられず、道長は御簾の中へ入っていき、兄を強く抱きしめる。
玉置は最期の場面について、「あくまで撮影していた自分の感覚ですけど、最終的には『(助けてくれたのに)道長ごめん』っていう感情が強かったんですよね」と語っている。それが伝わってくるのが、語り部が道兼の死を語る最中に見せた演技だ。道長の腕の中で、道兼は疫病の苦しみに悶えている。その苦しみの最中、病にかかるかもしれないことをいとわず、道兼の背中をさすり続ける道長への思いがこみあげ、じわじわとその目に涙が浮かんだ。その表情に、第15回で弟の前で見せた弱さを再び素直にさらけ出したのだと思えた。すがるようにして道長の腕をグッとつかむ道兼の手元が心に残っている。道長の家族を思う気持ちに触れたことで、若き日の道兼が求めていた家族からの愛をようやく得られたのだと感じた。道兼の最期は悲しみと苦しみに満ちていたが、家族に愛される安堵に包まれたものだったともいえる。
「あのお方の罪も無念も、すべて天に昇って消えますように……」
道兼の死を知ったまひろはそう言って、弔うように琵琶を奏でた。罪深い部分もあった道兼だが、その最期に寄り添った道長の存在によって、道兼を苛んだあらゆる苦しみから解放されたと思いたい。
■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK