『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』なぜ主人公を中学生に? プロデューサーに狙いを聞く

 『シンカリオン』が帰って来た。子どもたちが憧れ、大人たちも大好きな新幹線が変形してロボットとなり、子どもたちを乗せて戦うストーリーのTVアニメであり玩具も展開されているコンテンツ。その最新作となるアニメ『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』が4月7日の朝8時半から、テレ東系列ほかで放送スタート。

 鉄道ファンやアニメ好きの子どもを引き込み、メカ好きの大人も巻き込んで盛り上がりそうだ。この『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』に込めた思いを、ジェイアール東日本企画(jeki)でチーフプロデューサーとして『シンカリオン』の立ち上げ時から携わってきた鈴木寿広に話を聞いた。(タニグチリウイチ)

オールターゲットを『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』

鈴木寿広チーフプロデューサー

ーー前作『新幹線変形ロボ シンカリオンZ』の放送終了から約2年。待望の新シリーズ『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』のスタートとなります。少し間が空いたのは、設定や世界観の作り込みに時間をかけたからでしょうか?

鈴木寿広(以下、鈴木):『シンカリオン』というタイトルは、制作に本当にカロリーがかかるんです。職人気質の作り方をしているので、毎年続けて放送するのは難しいところがありました。あと、登場するのが新幹線である以上、ある程度はリアルな世界の中で描かなくてはいけないというところがあります。そうすると、何年も続けていった場合、新幹線というコンテンツを使い回すようなことにならないかという危惧がありました。

ーー『シンカリオン』は、スタート時もタカラトミーの玩具が先行して発売されて、3年後にTVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』の放送開始となりました。玩具とアニメが同時に展開されるキッズ向け作品とは少し様子が違っていました。

鈴木:当時は、玩具があってテレビがあって、漫画もあってゲームもあってといったメディアミックスのタイトルが多かったことは確かです。ただ、『シンカリオン』ではそれをやりたくなかったんです。同時に展開すると人気は急上昇する可能性もありますが、一転、急速にしぼんでしまうリスクを持つのと、しぼませず頂点をキープするのは並大抵のことではありません。新幹線というものを扱っていく以上は、末永く人気が続くものにしたい、それなら新幹線というだけである程度の高さからスタートできるので、そこから緩やかに認知度を上げていこうということで、玩具を先行させました。

ーー最新作『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』は、小学生が主人公だったこれまでのシリーズとは違って、主人公が中学2年生になりました。なぜですか?

鈴木:ターゲットですね。『シンカリオン』は、今も子どもたちに向けて作っていると思っていますが、子どもといっしょに観ることで、親の世代にも広がっているという実感があります。劇場版を含めて3本作ってきたこともあったので、ここで次のステージに上げたいという思いを持っていました。そこにコロナ禍が起こったことで、子どもたちがテレビでアニメを観る環境や習慣が変わって、配信でいろいろなアニメを観るようになって、小さい子どもでも子ども向けではない作品に興味を持つようになりました。

――子ども向けだからといって、内容まで子ども向けに絞らなくても良くなったということですね。

鈴木:そうです。だから、『チェンジ ザ ワールド』ではオールターゲットを狙っています。欲をかくようですが、そうすることによってもっと多くの人に観てもらえるのではないかなと思っています。

ーー不安はありませんでしたか?

鈴木:やはり怖いです。今まで築いてきたものがあってある程度自信を持っている部分とは、違うところで戦っていかなくてはいけないわけですから。ただ、チャレンジをしないと次のステージには行けないと思っているので、そこはもう思い切ってやりました。今も自信のようなものはありませんが、そうしたチャレンジに皆が賛同してくれたので、やっていくしかありません。不安を打ち消すために、いろいろなことにトライもしています。

ーー例えばどのような?

鈴木:内容も、玩具の展開も全部がそうです。今までのイメージを引きずらないようにしています。細かい話では、『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』というタイトルロゴも、今までだったら赤とか黄色を絶対に入れていたはずですが、今回は使っていません。タイトル自体も、子どもが声に出しやすくて覚えやすい「Z(ゼット)」のような音を入れていません。

ーークールでカッコ良いタイトルロゴです。『チェンジ ザ ワールド』という言葉自体にも、『シンカリオン』の世界観を変えていこうという意思が感じられます。

鈴木:そうです。『チェンジ ザ ワールド』はある種の意思表示と個人的には思ってます。あとは、新しいシンカリオンへのチェンジ、主人公タイセイが世界をチェンジさせていくお話、リアルの世界とメタバースの世界を行き来するような設定もあって、そういったものを総合的に考えて付けたタイトルとなりました。

ーー玩具についてですが、こちらも過去のシリーズとは少し違ってハイターゲットを狙ったようなところがあります。発売するタカラトミーと話し合われたのですか?

鈴木:玩具の企画開発はタカラトミーさんが手がけていますが、アニメの方とも当然連携しながら作ってもらっています。今回大きく違うところは、1両で変形できるという点です。今までは3両のプラレールを変形させて合体させていました。今回はタカラトミーさんから、「こういった変形も可能ですよ」といった話が出て取り入れました。素のシンカリオンがどれだけカッコよくなるかを追求した形のように思いました。

ーーこれまでのシンカリオンは、プラレールという子ども向けの鉄道玩具がベースになっていたところがあって、すこしデフォルメされた感じになっていました。『シンカリオンZ』では在来線との合体が実現しましたが、やはりプラレールがベースでした。今回は、鉄道模型の新幹線がロボットに変形するようなところがあります。

鈴木:素のシンカリオンのカッコよさを追求したかったので、あまり他のものと合体させたくありませんでした。リフトやトレーラー、ドリルといった「エルダビークル」でパワーアップさせる楽しみはありますが、シンカリオンが別の何かと1対1で合体するのではありません。シンカリオン自体の魅力を高めるものになっているので、ちょっと良いなと思っています。

ーー新しいシンカリオンの反応は?

鈴木:自分の子どもが今8歳なんですが、前までのシンカリオンだったら卒業していてもおかしくなかったのが、今回はとても興味を持ってくれています。2月18日にテレ東系列で放送した『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』放送記念スペシャル番組を、ずっと繰り返して観ていますから。

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