『デデデデ』のカオスな世界観になぜ共感できるのか 尊くまぶしい非日常の中の日常

『デデデデ』カオスな世界観になぜ共感?

 劇中で母艦が現れて大きな被害を受けた日が「8・31」と呼ばれているのは、「3・11」と呼ばれる東日本大震災を意識しているのは明らかだ。突然の侵略者の出現は、災害と同じなのかもしれない。門出の母親はマスクやゴーグルを着けて「A線」から身を守り、母艦によって引き起こされる悪影響を過剰に恐れている。小比類巻も同様に、ネットから得た侵略者についての不確かな情報を信じておびえている。

 こういった2人の様子は、大震災を経験した人なら思い当たる節があるだろう。本当かどうか分からない噂が出回ったり、日用品の買い占めが起こったり……。SF作品である『デデデデ』の世界観が他人事とは思えない理由がここにある。私たちも似たような経験があるというリアリティ。同じく異常事態だった大震災の状況を彷彿とさせるのだ。

 浅野いにおの『デデデデ』ワールドは、戦争と女子高生の日常という相反するものを絶妙なバランスで描いている。「デーモン」と呼ばれていじめられていた門出をおんたんが助けたのがきっかけで、2人は「絶対」と呼びあう深い絆で結ばれている。だが、そんな彼女たちの日常は不安定で、いつ崩壊してもおかしくない。だからこそ、門出とおんたんの平和な日常が観客にとって尊くてまぶしいものに映るのだ。しかし、ラストの展開からその平和は長くは続かないと予感させる。前章はまさに終わりの始まりだ。

■公開情報
『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』
前章:全国公開中、後章:5月24日(金)公開
声の出演:幾田りら、あの、種﨑敦美、島袋美由利、大木咲絵子、和氣あず未、白石涼子、入野自由、内山昂輝、坂泰斗、諏訪部順一、津田健次郎
原作:浅野いにお『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(小学館『ビッグスピリッツコミックス』刊)
監督:黒川智之
シリーズ構成・脚本:吉田玲子
キャラクターデザイン・総作画監督:伊東伸高
美術監督:西村美香
音楽:梅林太郎
アニメーション制作:Production +h.
製作:DeDeDeDe Committee
配給:ギャガ
©浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee
公式サイト:dededede.jp
公式X(旧Twitter):@DEDEDEDEanime

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