『ブギウギ』最終週に立ち返るスズ子と羽鳥が紡いだ物語 描かれてきた「歌の力」の二面性

『ブギウギ』スズ子と羽鳥が紡いできた物語

 そして今、スズ子は歌のキャリアを終わらせようとしている。モデルとなった笠置シヅ子と同じように、年末の歌番組でトリを飾り、新聞からも“復活”と謳われた直後に引退を決意した。笠置シヅ子の歌手引退も様々な理由が飛び交ったが、スズ子もいろいろなことを考えた上で決めたことだろう。自身の衰えを感じながら、次世代の力を確信している彼女は自らその席を立とうとしている。そこに水城アユミ(吉柳咲良)のような存在が座れるように。それと同時に、自分自身がもう歌うことであまり“ワクワク”しない、フルパワーを発揮できないことで観客を“ワクワク”させられない点も重要なはずだ。いずれにせよ、その決断の潔さは羽鳥のモデルとなった服部良一も後年讃えている。業界に限らず若者が“先輩”に仕事の機会を奪われているなんてことは今でもあることで、スズ子の決断はその後の日本の音楽シーンの成長そのものも促すもののように感じる。それがたとえ、羽鳥との関係を失うことになっても。

羽鳥の家・居間にて。善一と麻里にとある決断について話す福来スズ子(趣里)。

 最後にもう一度、日本全国にいるスズ子の歌に励まされたファンへのお礼を伝える記者会見を行うことにしたスズ子。一方羽鳥は、りつ子を介して胸の内を曝け出し、スズ子は羽鳥の妻・麻里(市川実和子)と気持ちを確かめ合う。スズ子の歌の終わり、『ブギウギ』の物語の終幕に向けて今、彼女は大切な人たちと対話を重ねていく。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、生瀬勝久、小雪、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
語り:高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー) 
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
音楽:服部隆之
主題歌:中納良恵 さかいゆう 趣里 「ハッピー☆ブギ」
写真提供=NHK
公式サイト:https://nhk.jp/boogie

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