『不適切にもほどがある!』Z世代はどう観てる? 令和で得たものと失ったものを考える

『不適切にもほどがある!』Z世代の視点

改善しようとして問題が起きている令和のジレンマ

 令和サイドでは、ハラスメントをなくそうとした結果生み出された問題が多く取り上げられている。第3話「カワイイって言っちゃダメですか?」で、テレビプロデューサーの栗田一也(山本耕史)が視聴者の目を気にし、言葉に過敏になり過ぎているのはその一例だ。

 弱い立場の人々が声を上げやすい反面、過剰なリスクマネジメントが生まれ、見直しが必要なのも事実。しかし、ハラスメント対策や働き方改革、インティマシーコーディネーターなどは、今まで見て見ぬふりをされてきた問題を解決できる手掛かりになる。これまでに残されてきた負の遺産を令和ではなくそうとしている。そのことによって生じるジレンマを映し出す描写にはリアリティがあると感じた。

『不適切にもほどがある!』が示した希望

 しかし実態としては、コンプライアンスに対する意識が低い人、現代の価値観を理解しようともしない人もいまだに存在する。筆者もこれまでの人生で何度もハラスメントを受けてきた。そして、それに対して直接反論できたことはない。誰もが意見を言いやすい社会にはまだなっていないし、私たちも腹を割って話すことを避けてしまう傾向が強いのも事実だ。

 時代が変わるにつれて、得たものも失われたものもたくさんある。だからこそ昭和という“過去の”時代に対して、嫌悪と同様に羨ましさも抱いた。だが、昭和の悪い面をなくしていくことを前提に良い面を取り入れることができれば、私たちはよりよい未来を生きることができるのではないか。

 
 昭和の価値観を持ちつつも、令和の人々の言葉を聞き入れ、令和の時代に適応している市郎の姿は、現代を生きる私たちに一縷の希望を与えてくれた。それこそが、本作が世代を問わない普遍性を獲得した要因なのかもしれない。

■放送情報
金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:阿部サダヲ、仲里依紗、磯村勇斗、河合優実、坂元愛登、三宅弘城、袴田吉彦、中島歩、山本耕史、古田新太、吉田羊
脚本:宮藤官九郎
プロデュース:磯山晶、勝野逸未
演出:金子文紀ほか
主題歌:Creepy Nuts「二度寝」(Sony Music Labels)
編成:河本恭平、松本友香
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/futekisetsunimohodogaaru/
公式X(旧Twitter):@futeki_tbs
公式Instagram:futeki_tbs

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