『オッペンハイマー』のオスカー圧勝は完璧な“世代交代”に 『ゴジラ-1.0』快挙の意義も
ちなみに作品賞と監督賞のダブル受賞は昨年に続き69作品目。キリアン・マーフィーの主演男優賞とロバート・ダウニー・Jr.の助演男優賞も受賞したわけだが、意外にも主演と助演の男優賞をダブル受賞した作品は少なく、過去にたったの5作品。奇しくも21世紀に入ってからは『ミスティック・リバー』と『ダラス・バイヤーズクラブ』と本作と、10年置きにやってくる。それ以前は『我が道を往く』と『我等の生涯の最良の年』『ベン・ハー』の3作品。作品賞も監督賞も同時に成し遂げたのは64年ぶりの快挙である。
また、作品賞受賞作で撮影賞も同時受賞したのは27作品目、作品賞を獲るためには最低限ノミネート必須ともいわれている編集賞との同時受賞は36作品目。作品賞・撮影賞・編集賞をすべて受賞したのは過去に15作品。『オッペンハイマー』は、『スラムドッグ$ミリオネア』以来15年ぶりの16作品目となる。13部門のノミネートで6つも落としてしまったとはいえ、しっかりと“獲るべきところは獲っている”。そんな受賞結果である。
『ゴジラ-1.0』山崎貴がアカデミー賞受賞後に語った思い 『オッペンハイマー』への言及も
日本時間3月11日に授賞式が開催された第96回アカデミー賞で、『ゴジラ-1.0』が視覚効果賞を受賞した。同賞の受賞は日本映画に限…
最後に、日本勢の快挙について、特に視覚効果賞の『ゴジラ-1.0』に触れないわけにはいかない。製作費2億9100万ドルの『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』、同2億5000万ドルの『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: VOLUME3』、同2億ドルの『ナポレオン』、同8000万ドルの『ザ・クリエイター/創造者』を相手に、一説によると製作費1500万ドルと言われている『ゴジラ-1.0』が勝利したというのは『エクス・マキナ』の時を想起させるジャイアントキリングであり、しかもそれを日本の国民的映画シリーズがやってのけたというのだから反射的にガッツポーズが飛び出してしまう。
スピーチで山崎貴監督が言った、「ハリウッドは私たちの作品を見てくれている」という言葉。どうしても規模では敵わないハリウッドという巨大な市場に、アイデアと技術力で勝てることを証明したというのは、日本だからという理由を差し置いても大きい。もっともこの受賞を受けて、日本の映画界が製作費の水準を上げるかどうかはそれぞれの会社の懐事情もあるのでなんともいえない部分ではあるが、少なくともスタッフに、作品を下支えしている末端の技術者たちにもっと夢を与え、同時に夢とかやりがいとかいうふわりとしたものではないものを与えられる業界になってくれるよう願っている。