『光る君へ』毎熊克哉だから成り立つ直秀の“優しさ” 身分違いの“同士”道長はどう動く?

『光る君へ』直秀の正体を知った道長

 『光る君へ』(NHK総合)第7回「おかしきことこそ」。道長(柄本佑)への想いを断ち切れず、没頭できる何かを模索し始めたまひろ(吉高由里子)は散楽の台本を作ろうと思い立つ。ある日、まひろは直秀(毎熊克哉)を訪ね、自分が考えた散楽の筋書きを伝えた。辻で披露されることになったまひろの演目は評判を呼び、民たちに笑顔を与える。

 第6回の終わり、道長が大内裏の警護をしていた晩、盗賊の一団が忍び込んだ。塀を越えていく盗賊たちを道長が見つけ、矢を放った。その矢は一人の盗賊の腕に当たる。道長は気づいていなかったが、矢を受けたのは直秀だった。まひろと道長が会えるようにと度々手引きしてきた直秀は、散楽一座の一員でありながら盗賊でもあったのだ。彼らは貧しい民たちに盗品を分け与えていた。初めて人を射った道長は、矢が腕に刺さる感触を思い出し、苦々しい顔をしていた。傷の手当を受ける直秀は痛みに悶える。

 道長と直秀の立場は大きく異なる。貴族である道長に対し、直秀ら散楽一座は藤原家中心の政治などをおもしろおかしく批判する風刺劇を披露している。けれど、道長と直秀の間に敵意はない。直秀は人を見下すことのない道長に好感を持っているように見える。

 また、直秀はまひろのまっすぐさにも心惹かれているようだ。まひろが描いた物語に観客たちが大いに沸く中、神のふりをした狐を演じ、おどけた化粧を施していた直秀は、観客たちの反応を見ていたまひろにやわらかな表情で笑いかける。直秀は険しい面持ちをしていることが多いのだが、ふと見せた、肩の力の抜けた笑顔に、義賊でもある直秀の元来の優しさが見えたような気がした。

 右大臣家に仕える武者たちと散楽一座の間で乱闘騒ぎになった時にも、直秀の優しさや気遣いが垣間見える。まひろと道長が2人きりになったところへ、まひろの従者で乱闘騒ぎに巻き込まれてしまった乙丸(矢部太郎)とともに現れる。乙丸とともにやってきた道筋は描かれていないが、その場に駆け込んできた直秀の佇まいは、その場からいなくなったまひろを心配する乙丸を導いたのだろうと思わせる自然さがあった。「邪魔しちゃった」という口ぶりがやや申し訳なさげだったことや、まひろと乙丸が去った後、まず道長に伝えたのが道長の従者・百舌彦(本多力)の無事だったことなどから、直秀の気遣いを感じる。

 貴族に対して複雑な思いも持ち合わせる直秀は、道長に向かって「お前らの一族は下の下だな」と憎まれ口をたたく。だが、渋い顔をして「全くだ」と返した道長を見て、ふっと笑った。道長は、自分たちの存在を見下すような貴族の在り方とは全く異なる。そのことに改めて気づかされ、おかしみを感じたのかもしれない。

 道長にとっても、直秀は頼み事をできる相手である。道長は公任(町田啓太)や斉信(金田哲)ら打毱の試合に出ることになった。しかし行成(渡辺大知)が急な腹痛で来られなくなると、道長は直秀を代理として呼ぶ。公任たちには腹違いの弟だと嘘をついた。貴族たちの中に紛れることへの居心地の悪さや緊張感からか、直秀の面持ちは普段以上に険しいが、直秀は道長からの頼みに誠意をもって取り組む。最後には公任から「直秀殿の杖の振りは見事だったな」と言われていた。この際、直秀が公任に言葉を返さなかったのは、立場の違いからバツが悪かったということもあると思うが、一番には道長に迷惑をかけないためだったように思われる。

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