『君が心をくれたから』雪乃が雨に渡した最初で最後の贈り物 母が語った雨という名の真意

 ここで改めて、五感はそれぞれが一個独立したものではなく、例えば嗅覚が記憶と密接に紐づいていたように(第3話・第4話)、他の感覚同士もどこかで必ず繋がっているものだと考えさせられる。記録された微かな声を耳に当てて聴くことで、近くにいない人を近くに感じることができる。いずれ雨は、この雪乃の声も聴こえなくなってしまうのだろう。そうわかっている以上はどうしたってつらい描写になるのだが、窓の外に降る雨を見て少しだけ晴れやかな笑顔を浮かべる雨。それだけで充分に希望の光は射している。

 今回のエピソードではもうひとつ、“名前”が物語を動かすキーとして機能する。太陽から名前で呼んでいいかと訊かれ、雨はまだ自分の名前が苦手であると答える。子どもの頃の雪乃との“交換日記”も自分の名前への嫌悪感から投げ出してしまっており、ずっと彼女の中に引っかかり続けていた“雨”という名の真意を、今回の家族旅行で直接霞美に訊ねるのである。「雨があなたを笑顔にしてくれますように」。先述の窓越しの雨の笑顔、それは彼女にとって自分の名前を受け入れた瞬間、やっと前に進むことができる瞬間というわけだ。

■放送情報
『君が心をくれたから』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:永野芽郁、山田裕貴、斎藤工、松本若菜、白洲迅、出口夏希、真飛聖、遠藤憲一、余貴美子
脚本:宇山佳佑
主題歌:宇多田ヒカル
演出:松山博昭
プロデュース:草ヶ谷大輔
©︎フジテレビ
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