『ビヨンド・ユートピア 脱北』が教えてくれる生半可ではない現実 想像を超える脱北の道
2つ目の大きなテーマは教育だ。教育における洗脳とも言えるだろう。他国の情報を遮断され、北朝鮮は理想郷だと小さな頃から教え込まれ、逆らえば理不尽な理由で処刑されるリスクもある。怯えながら生活し、やがて洗脳されてしまうという構図となっていいる。
何かしらの理由をつけられマークされてしまうと収容所に入れられ、拷問を受けてしまう。家族にも危険が及んでしまうため、生きるために国を出るしか選択肢がなくなってしまう。
この洗脳のがどれほどのものなのかを物語るシーンがある。命からがらロ一家がラオスのセーフハウスに着きインタビューを受けている際に「北朝鮮(祖国)をどう思うか?」という質問に対し、政権を賛美する言葉を語り、金正恩を尊敬するような回答をするのだ。淡々と語るその姿に、幼い頃から長い期間洗脳のような教育を受けてしまったことを感じさせる恐ろしさが溢れていた。
本作は第96回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞のショートリストに選出されている。ノミネーション発表よりも先に鑑賞できる珍しい機会となるので、是非劇場で観ていただきたい。
■公開情報
『ビヨンド・ユートピア 脱北』
TOHOシネマズ シャンテ、シネ・リーブル池袋ほかにて公開中
監督:マドレーヌ・ギャヴィン
製作:ジャナ・エデルバウム、レイチェル・コーエン、スー・ミ・テリー
配給:トランスフォーマー
2023年/アメリカ/英語・韓国語ほか/115分/ビスタ/カラー/5.1ch/G/原題:Beyond Utopi/日本語字幕:岩辺いずみ/字幕監修:西岡省二
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