『たとえあなたを忘れても』最終話直前に壮絶な展開 ラストの空の姿に思わずゾッとする

 思い出とは、人と人を繋ぐかけがえのない人生の宝である。“くるくるとストローを回す癖”のように、無自覚に記憶に残ってしまうその人自身を模るヒントは、意外にも日常生活に数多く散りばめられているのかもしれない。しかし、記憶喪失の本当の辛さは、そのヒントにすら気が付くことができないことにある。それを教えてくれたのが、茜だ。

 ひょんなことから、元恋人との再会を果たした茜。恋人時代の思い出を「ええ思い出やし」と語る元恋人をみて、彼女は自分から抜け落ちたものの大きさを知ってしまう。「記憶を失うっていうのは毎回死ぬようなもんや」と美璃に語る茜の言葉は、家族や周囲の人の痛みを想像した上での、自分への戒めの言葉のようにも聞こえた。

「空が私を忘れても、私は空を忘れない」「約束する、私はずっと空のそばにいるから」

 第8話のラストでは、いよいよ美璃と空が互いの胸のうちを晒して向き合うことに。土砂降りの雨の中、キッチンカーの片付けに苦戦する空を助けた美璃は、空を前にして言葉にならない想いが溢れて泣き出してしまう。そんな美璃を見た空は思わずその場から駆け出すが、それでも「人はね、一度好きになった人のことは嫌いになれないの。記憶があるから」という美璃の真っ直ぐな言葉が空の心の棘をゆっくりと溶かしていく。愛溢れる美璃のモノローグを聞いて、2人がこの先、“ずっと一緒”にいる幸福な未来への幕開けに繋がるのかと思いきや……。

 場所は変わり、映し出されたのはたくさんの2人の思い出の写真が貼られた部屋。その写真の中には美璃と空の結婚式、さらには子どもの写真まである。数年の時が過ぎていることは予想できるのだが、2人の写真を見つめる空の瞳には光がない。最終話直前とは思えない恐ろしさに、思わずゾッとした。言うまでもない。あの空の様子が何を意味しているのかを、我々はもうわかってしまっている。

■放送情報
『たとえあなたを忘れても』
ABCテレビ・テレビ朝日系にて、毎週日曜22:00〜放送
TELASA、U-NEXTにて、見放題配信
TVerにて、放送終了後見逃し配信
出演:堀田真由、萩原利久、風間俊介、岡田結実、畑芽育、松井玲奈、森香澄、丸山智己、須藤理彩、加藤貴子、檀れい
脚本:浅野妙子
プロデューサー:清水一幸、辻知奈美、髙石明彦(The icon)、高橋香奈実(The icon)
演出:大谷健太郎、髙石明彦
音楽:平野真奈、福廣秀一朗
主題歌:由薫「Crystals」(Polydor Records)
制作協力:The icon
制作著作:ABCテレビ
©️ABCテレビ
公式サイト:https://www.asahi.co.jp/anawasu/
公式X(旧Twitter):@anawasu_abc
公式Instagram:@anawasu_abc
公式TikTok:@anawasu_abc
公式LINE: @abc_drama

関連記事