これが人間の本質? 『イカゲーム:ザ・チャレンジ』はデスゲーム出資者の気分を味わえる

『イカゲーム:ザ・チャレンジ』の味わい

 また『イカゲーム:ザ・チャレンジ』に登場する参加者も、どういうわけかデスゲームらしさに溢れている。年老いた母親と参加する息子や、一人一つずつ配られる弁当をずるして二つ食べるイギリス人。謙虚かつ善良で、リーダーシップを発揮する元プロバスケ選手。まさにデスゲーム的な面々が顔をそろえている。その中でも「同情は弱さにしかならない」「俺より優れた人間はいない」「自分に自信があって社交的」「神様が俺をこういう人間に作った」「人生は不公平だというやつがいるが、それは嘘だ」「強さこそ俺の最大の長所」と豪語する、高圧的かつ攻撃的な立ち振る舞いをする大学ではアメフト部に所属するジョックが出てきた時は、流石にやりすぎではと思ったくらいだ。おまけに彼はすぐさまマッチョな集団のリーダーとなり、一緒になって筋トレをはじめたりする。あと英国で上位0.5%のIQを誇るメンサ会員の女性もかなりデスゲームらしい人材だ。

 とまあ、『イカゲーム:ザ・チャレンジ』の参加者を記号的に書いてしまったが、本作では参加者のインタビューも大切な要素だ。題材が題材なだけに特定の参加者にヘイトが集まりやすい『イカゲーム:ザ・チャレンジ』は、参加者へのインタビューによって彼らが物語のキャラクターではなく、多様な面を持つ一人の人間であると教えてくれる。しかしこの試みが成功しているかは怪しく、どちらかといえばエンターテインメントに必要とされる感情移入のための装置として機能している。これによって、視聴者は特定の“キャラ”を好きになり、応援し、その参加者がピンチになれば手に汗を握るはずだ。

 デスゲーム運営はよくデスゲームの様子を暗黒お金持ちにリアルタイムで見せているが、こうして『イカゲーム:ザ・チャレンジ』を観てみるとこの形式が一番デスゲーム運営に適しているように思える。無論エンターテインメントのノウハウがないところがデスゲームを作ったところで大したものはできないはず。『イカゲーム:ザ・チャレンジ』は今後デスゲームを運営していくうえで大きな指針になるのではないだろうか。

 結論。『イカゲーム:ザ・チャレンジ』は今すぐ全ての予定を後回しにしてまで観るほどのコンテンツではないが、暇だけど面白い映画を観るような気力がない時に適した作品だと言える。実際、人の醜さが炙り出されるようなゲームシステムはリアリティショーとしての危うさを孕みつつも見ごたえがあり、NetflixのCEOも「これが人間の本質」と満足しているかもしれない。

■配信情報
『イカゲーム:ザ・チャレンジ』
Netflixにて独占配信中
©2023 Netflix, Inc.

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