『ナポレオン』は神格化されているナポレオン像を壊す 愛と狂気が観客を引き込む衝撃作

『ナポレオン』は愛と狂気が引き込む衝撃作

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、国内外問わず歴史は好きだったのにテストは毎回赤点ギリギリだった橋本が『ナポレオン』をプッシュします。

『ナポレオン』

 ナポレオンと聞いて何を想像するだろうか? フランス革命の英雄、歴史上最も有名な軍事指導者の1人……などと多くの方は思い浮かべるのではないか。実際、私も最初思い浮かべていたのは、「フランス革命の英雄としての強いナポレオン!」というイメージだった。しかし、今作を観るとそのナポレオン像がたった1つの側面でしかなかったことがよくわかる。教科書に書かれているような戦いが功績ではなく、実は罪深いものであったのではないかとも思えた。本作は神格化されていたナポレオン像を壊す1作となっている。

 欲望の化身たるナポレオンの人柄を中心に栄光と没落が描かれていくのだが、ストーリーの柱となるのは妻ジョセフィーヌとの愛だ。愛とも言えるが執着とも捉えることもできる。どんなに過酷な戦場にいても何度も繰り返されるジョセフィーヌへの手紙や愛の言葉が、少し異常にも見え、恐怖すら感じる。

 そんなナポレオンをホアキン・フェニックスが演じるのだから間違いない。もはやこの内容でナポレオンを映画化するのならば、彼以外に誰が演じることができるのだろうかと感じた。1793年のフランス革命での王妃マリー・アントワネットの処刑から、1821年のナポレオン死去までの28年間。ナポレオンがなぜ狂気的で冷酷非道な人間へと変化してしまったのかを、抜群の表情演技で訴えてくる。

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