『トキコイ』“辻褄合わせ”の本領発揮 “タイムトラベルコメディ”として目覚ましい進化

『トキコイ』“辻褄合わせ”の本領発揮

 “恋の逃避行”という名の時をかけた駆け落ちをスタートさせた廻(吉岡里帆)と翔(永山瑛太)は前回、1983年で廻の両親の運命の日をアシストする。それを踏まえて廻はある仮説を立てる。こうして自分たちが40年前に来ていなかったら、両親は結婚しておらず、1992年に廻が生まれることもなく、未来に存在すらしていなかったかもしれない。

 それを天野(伊藤万理華)は屁理屈だと一蹴するが、この現在を基準にした過去へのタイムトラベルの必然性という命題はかなり興味深いものがある。あらかじめそうなるべきだったのか、はたまた本来は違っていたはずだったのか。どちらにせよ、どこかで一度書き換えられた過去は、その先の時間を生きてきた者たちが、パラドックスを生まないためにあえて遡り、その書き換えを繰り返し続ける必要がある。『時をかけるな、恋人たち』(カンテレ・フジテレビ系)の第7話は、そういった意味でまさに“辻褄合わせ”の本領が発揮されるエピソードであった。

 廻と翔は、仮説を証明するかのように2003年7月20日へと向かう。第1話で回想シーンとして描かれた、小学生時代の廻(稲垣来泉)が初恋の人である諸星(柊木陽太)にラブレターを渡せなかった日の出来事。廻はその日、諸星を見送った後に落ち込んでいた自分を慰めてくれたお姉さんが現在の自分であると確信する。小学生の甘酸っぱいやり取りを陰から見守った後、廻はあることを思い出す。それは大人になって再会した諸星(ニシダ)が「手紙をもらって嬉しかった」と話していたことだ(それは第3話の序盤のシーンで描かれていた)。

 簡潔にまとめれば、小学生の廻が渡せずに公園のゴミ箱に捨てたラブレターを、未来から翔を追いかけてやってきたリリリー(夏子)がこっそりと諸星に渡し、それが諸星が大人になるまで思い出として残り続け、20年後の再会での諸星の発言へと繋がるのである。その段取りも、現代の廻たちが生きてきた世界線においてはすでに既成事実として存在している正式な過去であり、前日に遡って「けっこん」を「けっきん」に書き換えるというコントのような辻褄合わせもまた然り。

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