朝ドラ『ブギウギ』安井順平こそが「東京編」の真の立役者? 梅丸楽劇団での功績を検証

 放送中の朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合)の「東京編」は、個性的なキャラクターだらけでにぎやかだ。演出家の松永大星(新納慎也)、作詞家の藤村薫(宮本亞門)、作曲家の羽鳥善一(草彅剛)、ブルースの女王である茨田りつ子(菊地凛子)などなど、ヒロイン・スズ子(趣里)が所属する「梅丸楽劇団(UGD)」の周りには物語を転調させる人物たちばかりが揃っている。

 しかしだ。こんな個性派だらけでは、場合によっては収拾がつかなくなることだろう。あるときには人々をまとめるような、またあるときには潤滑剤となるような、そんな存在が必要だ。

 このポジションを担っているのが「UGD」の制作部長である辛島一平。演じているのは安井順平である。

 辛島とは、大阪の「梅丸少女歌劇団(USK)」でスズ子がお世話になった林部長(橋本じゅん)の後輩。大物作曲家や気鋭の演出家、スター歌手らの間に挟まれ、いつも大変な思いをしている人物だ。「UGD」の旗揚げ公演では現場を取り仕切るため、自由な振る舞いをするアーティストたちを結ぶため、そして何よりこのビッグプロジェクトを成功に導くために東奔西走。たびたび彼が翻弄されながら奮闘している姿が映し出されていたものだが、本編には描かれていない功績や苦労というものがかなりあるはずだと思う。

 この辛島というキャラクターを、一挙手一投足と巧みなセリフ回しで表現する安井の演技は観ていて惚れ惚れする。発する言葉の“大小高低”、“緩急”、“押し引き”、“静と動”とを駆使して繰り広げる話芸は、まさに「流麗」といえるものだろう。その声に合わせた軽やかでパワフルな身のこなしも、華やかな空間の中で目を引く。俳優・安井順平の演技を朝から堪能できるだなんて非常に贅沢である。

 才能のある者たちが揃ってのショービズの世界だが、やはり彼ら彼女らをサポートする存在があってこそ成立するもの。ズバリ、辛島がいなければ旗揚げ公演の成功も、その後のスズ子ら「UGD」の面々の輝かしい活躍もなかったはず。スズ子の移籍騒動はいろんな立場の人々を困らせたが、筆者としては辛島がもっとも不憫でならなかった。

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