【ネタバレあり】『ロキ』S2は今後のMCUにどう影響する? 最終話の選択がもたらすもの

 こんにちは、杉山すぴ豊です。ここ最近のアメコミヒーロー映画まわりのニュースや気になった噂をセレクト、解説付きでお届けします! 今回は先日、衝撃と感動を与えてくれた『ロキ』シーズン2の最終回とこれが今後のマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)がどう繋がっていくかについて考えてみたいと思います。

※以下、『ロキ』シーズン2最終話までのネタバレあり

 まず圧巻の最終回でした。MCUのドラマで、ここまで心が震えたことはありません。『ワンダヴィジョン』のワンダ(エリザベス・オルセン)の切なさ、『ファルコン&ウインター・ソルジャー』のサム(アンソニー・マッキー)の決意など、何度かエモーショナルな場面に立ち合ってきましたが、今回のロキ(トム・ヒドルストン)の選択にも知らずに涙が出てきてしまいました。少し冷静になって話を進めましょう。

 まずこの最終回を語る前に、現状のMCUがどういう状況なのかをおさらいする必要があります。

 現在のMCUはフェーズ5に突入していますが、フェーズ4、5、6は「マルチバース・サーガ」という名称で括られています。それまでのMCUのフェーズ1から3(映画で言うと『アイアンマン』から『アベンジャーズ/エンドゲーム』を経ての『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』まで)は「インフィニティ・サーガ」でした。

 インフィニティ・サーガは、1つの世界(ユニバース)に点在していたさまざまなヒーローやヴィランたち、そしてインフィニティ・ストーンの存在が絡み合い大団円を迎えるという構成になっていました。

 それに対し、マルチバ―ス・サーガは名前の通りマルチバースがポイントとなる。マルチバースとは、世界や現実、歴史(時間軸)というのものは“1つ”ではなく可能性の数だけ存在し、それらはマルチバース(ユニバースの“ユニ”が単一を意味するのに対し、マルチバースの“マルチ”は複数)と呼ばれる。このマルチバース間のバランスを崩す大きな危機が訪れ、それをヒーローたちがいかにくい止めるかという話になっていくわけです。

 ということは、このサーガの舞台となるマルチバースというものを守らないとこの先MCUは続いていかないわけです。まさに今回のロキは、最後の最後で自身がマルチバースを守る神になるのです。MCU初登場時には邪神だったロキ、裏切りと悪戯の神だったロキ、なによりもあのヴィランだったロキがです。

 『ロキ』シーズン1では、ある時間軸=ユニバースにおいて、本来死ぬはずの運命だったロキがひょんなことから生き延びてしまったことから、そうした時間軸の乱れを許さないTVA(時間変異取締局)によって逮捕されます。ロキのように本来の運命から外れてしまったものを「変異体」と呼びます。

 このTVAという組織は、マルチバースを守る組織と思いきやそうではない。むしろある1つの時間軸に基づく世界、歴史を守るための組織なのです。彼らが守るのは「神聖時間軸」という1本の流れです。従って、ロキのような変異体が生まれるとそこを起点に別の可能性が生まれてしまい、神聖時間軸とは別のユニバースが生まれてしまうからこういう変異体を取り除く必要がある。これを剪定といいます。まさに無駄な枝を切るような行為です。そして、各時間軸=ユニバースはひものように可視化され、これらを“織り上げ”て、神聖時間軸に織り込ませていく“時間織り機”なる装置も持っています。

 TVAは、剪定と時間織り機を使って神聖時間軸以外の時間軸(世界)ができないように、つまりマルチバースが発生しないようにしていたわけです。その理由は、TVAという組織を作った“存り続ける者”(ジョナサン・メジャース)という超優秀な科学者と関係があります。

 “存り続ける者”は、マルチバースの各世界に自分と同じ存在(“存り続ける者”からすれば、それらはすべて自分の変異体です)がいることに気づきます。自分の変異体の中にはとても邪悪なやつもいて、野心を抱き、全マルチバースを支配しようと企む者もいる。そうなると、マルチバース間の戦争が起きる。そこでTVAを作りマルチバースの発生を食い止めていたわけです。

 ただそれは1つの世界しか許さない行為であり、剪定されたことで失われた命や世界もある。そう、「マルチバースが生まれる」ことより「1つのバース=神聖時間軸しか許さない」ことのほうが異常なのです。神聖時間軸を守るために他のバースをつぶすことは、神聖時間軸側のエゴでしかないからです。

 なので、シーズン1の最後ではロキのさらなる変異体であるシルヴィ(ソフィア・ディ・マルティーノ)が、自分の人生を奪ったTVAを憎み、“存り続ける者”を殺してしまいます。結果、マルチバース化に歯止めがかからなくなり、“存り続ける者”の変異体が各バースに発生。このままだと、大戦争ないし破滅が起きる可能性が、というところで終わりました。シーズン2では、ロキとロキが心を許したTVAの仲間たちがこの事態を回避するために動くわけです。

 実はシーズン1を楽しんだ時に、なぜシーズン2を作るんだろうかと思いました。もちろんまたロキに会えることは楽しみだったのですが、先にも書いたように、この先MCUはマルチバース間の危機を描いていくわけです。ならば、シーズン1のここで終わっても繋がるし、シーズン2でこの問題が解決されてしまったら、マルチバース・サーガにならないのではないかと思ったのです。しかし、それは杞憂に終わりました。

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