『銀河鉄道の父』役所広司と菅田将暉が紡ぐ“循環”の物語 父から見た宮沢賢治の生涯とは
映画『銀河鉄道の父』を観ると、家族の繋がりとは何だろうと考えさせられる。宮沢賢治の祖父・喜助(田中泯)と、父・政次郎(役所広司)は、同じ「息子を愛する父親」として、言葉を交わさずとも通じ合うものがある。では、「長男として家業を継いでほしい」という当初の政次郎の思いとは裏腹に、「物語」を作ることに人生を懸けた賢治(菅田将暉)と父・政次郎は? 同じ道を歩んだわけではない、彼ら父子の間に確かに存在する「物語」という名の“どこまでも”続く永遠の繋がり。それは、私たち現代人にとっても、生きていく上で大きなヒントとなることだろう。
映画『銀河鉄道の父』のBlu-ray&DVDが11月8日に発売される。Blu-ray映像特典には、予告編集だけでなく、メイキング映像や、賢治の故郷・花巻市で行われた特別試写会含め4回に渡る舞台挨拶集、「映画『銀河鉄道の父』特番〜日本中に届けたい感動の物語〜」が含まれており、見応え十分である。
『銀河鉄道の父』は、門井慶喜の直木賞受賞作である同名著書(講談社文庫)を原作に、坂口理子が脚本を手掛けた作品である。監督は、『八日目の蝉』『いのちの停車場』の成島出。特番において、成島が「家族は世界の一番ちっちゃい単位であるけど、でもそこにすごく世界を表す」と述べているが、本作と同じく役所広司が「父親」を演じた前作『ファミリア』に続き、本作もまた、一家族の物語を通して「世界」を、もっと言えば、連綿と続く人々の営みそのものを描いていた。
また、何と言っても特筆すべきは俳優陣で、役所広司と菅田将暉が親子を演じるというだけで必見である。21歳から70代までを違和感なく演じた役所は言うまでもなく素晴らしいが、さらに、そんな「政次郎さんをずっと感じながらのお芝居だけを一番トップに持ってきてやっている感じ」とメイキング映像において言及している菅田は、役所との芝居の時間を「こんな幸せな時間はない」と語りつつ、食事制限、チェロの弾き語り、賢治の実際の筆致を何度も模写して臨んだという書きものなど、並大抵でない努力の結果として、賢治の人生を鮮やかに体現して見せる。
一方、賢治を「たくさんの憧れの人の中のかなり上位を占める人」と語る田中泯は、彼を追ったドキュメンタリー映画『名付けようのない踊り』において、世界的なダンサーでありながら、「野良仕事」に明け暮れる日々の様子を見せていて、「農民と共に生きた」賢治の祖父役にこれほど相応しい人はいないだろう。そして、賢治がその死を描いた詩『永訣の朝』があまりにも有名な妹・トシを演じた森七菜。既にその悲しい運命を見越していたかのように、若い時分から祖父や父よりもしっかりした死生観を持つ、天使のような女性を見事に演じていた。