『禁じられた遊び』に感じたJホラーの原点 “恐怖と笑いは紙一重”に向き合った一作に

 そうして現代の時間軸に戻って展開するのは、言うまでもなく行きすぎた嫉妬心が邪念へと変わって生じる歪な三角関係の構図である。幾度か見られる直人・比呂子・美雪の三者が対峙する光景は、美雪が禁忌を破って蘇った存在であることを踏まえれば長崎俊一監督作『死国』ーーこれは中田の『リング2』の併映作品だったーーのクライマックスでの栗山千明と夏川結衣、筒井道隆の対峙と符合する。そう書きながら、蘇りの儀式に血脈として受け継がれる能力というもの自体も『死国』だと気付かされる。もっとも終盤の庭先での一連においては、三者の間に介入する第四の人物の立ち位置が大きく異なっているし、土着的なものも信仰心もない普遍的で現代的なものに置き換えられているわけだが。

 ちょうど8月ごろに、中田秀夫と双璧をなして“Jホラーの巨匠”と称される清水崇が、古びた家と階段、母親、そして俊雄という名の少年という要素を用いて自身の代表作『呪怨』の再構築を図るような傑作『ミンナのウタ』を生みだした。中田は今回の『禁じられた遊び』において、Jホラー黎明期の原点を次々とにおわせ(もちろん髪の長い女という定型化した存在も欠かせない)、同時に美雪の肉体が結合していく様で『“それ”がいる森』の“それ”の分離行為を逆転させ、霊的な存在を愛をもって抱きしめる様で『仄暗い水の底から』の絶望的なクライマックスを反復させる。

 2人のJホラー監督がこの2023年の夏に発表したこの2作は、ある意味で彼らが作りあげてきたJホラーの原点に立ち返るものであり、また一方では、そろそろ“『リング』の中田・『呪怨』の清水”というイメージを払拭し、次の世代の監督たちにJホラーのバトンをつなぎたいのだという小さな抵抗のようなものを感じずにいられない。

■公開情報
『禁じられた遊び』
全国公開中
出演:橋本環奈、重岡大毅(ジャニーズWEST)、堀田真由、倉悠貴、正垣湊都、猪塚健太、新納慎也 、MEGUMI、清水ミチコ、長谷川忍(シソンヌ)、ファーストサマーウイカ
監督:中田秀夫
脚本:杉原憲明
原作:清水カルマ『禁じられた遊び』(ディスカヴァー文庫)
企画・プロデュース:平野隆
プロデューサー:小杉宝、岡田有正、大脇拓郎、田口雄介
配給:東映
©2023映画『禁じられた遊び』製作委員会
公式サイト:https://kinjirareta-asobi.jp/
公式X(旧Twitter):@kinjirareta_asb

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