『らんまん』南方熊楠の「神狩り」への憤りに徳永は苦い顔 早川の再登場が吉をもたらすか

 『らんまん』(NHK総合)第118話で、万太郎(神木隆之介)は寿恵子(浜辺美波)に、南方熊楠から送られてきた標本の中にあったハチクの話をする。ハチクは120年周期で開花し、開花したあと、山中の竹林が一斉に枯れ果てる。ハチクには「人の世に異変が起こる時、竹の花が咲く」という伝承も残っている。

 寿恵子は「120年も見慣れた景色が急に変わるのは、私なら怖いです。吉兆なのか、凶兆なのか……」と少し怯えた表情を見せた。万太郎が言う通り、竹としてはただ花を咲かせているだけだ。しかしハチクの開花が見せる景色のように、万太郎たちを取り巻く環境はガラリと変わっていく。

 南方からハチクの花の標本が届いた翌年の2月、日露戦争が起こった。戦争を経て、渋谷の町は変容した。大練兵場が造られたことで、兵士が街に集うようになった。渋谷は交通の要所となり、練兵場で日本人による初の動力飛行が成功したことで、渋谷の名は全国に知れ渡った。花火に歓声をあげる人々の様子を見る限り、渋谷に集う人々にとってこの変化は吉兆として受け入れられている。だが、寿恵子がふと視線を落とすと、そこには大きな木の切り株があった。切り株を見つめる寿恵子だけが、不安を覚えるような表情をしていたのが強く印象に残る。

 万太郎もまた、野宮(亀田佳明)から届いた手紙を通じて、国の大号令によって自然が軽んじられていく現状を知った。南方との共同研究に応じた野宮は、南方の憤りについて書き綴る。合祀により潰された神社の森は全滅した。樹木一本もなく、井戸の水も濁り、飲むこともできないという。「全てが喪われる前に、君に、勝手な願いを託します」という野宮の言葉には、万太郎と同じく植物を愛する南方の意志も込められているようだった。

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