『最高の教師』九条の言葉が学校全体を突き動かす 思いがけないヒーローが登場した第2章

 誰かに新校舎の吹き抜けへ呼び出され、そこから転落して非業の死を迎えた鵜久森(芦田愛菜)。 “2周目の人生”でも鵜久森の葬儀へ足を運ぶことになってしまう九条(松岡茉優)。そこで鵜久森の母・美雪(吉田羊)から声をかけられ告げられる、生前に鵜久森が言っていたという言葉。そこでこのドラマのタイトル回収が行われるのである。9月2日に放送された『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(日本テレビ系)第7話は、“第2章”の幕開けであり、まさしく暗中模索のエピソードであった。

 鵜久森の死後、しばらく休校となっていた鳳来高校には多数のマスコミが押し寄せ、教職員たちはその対応に追われていた。警察の捜査によって導きだされたのは事故か、あるいは自らの選択で転落したか。そんななか九条は、教頭の我修院(荒川良々)らに、3年D組の教室内でかつて行われていた鵜久森に対するいじめの映像を見せ、「大人が見ている表面的な世界だけで結論をつけるべきではない」と語る。そしてD組の教室に向かい、生徒たちに「私たちには考える責任がある」と訴えかけると、この一件にクラスとしてどう向き合うのかを生徒たちに委ねるのである。

 これまで鵜久森をはじめとした生徒たちに九条が語りかけてきた「なんでもする」「なんでもします」という言葉が、今回のエピソードの軸として複数の登場人物たち、それも“大人たち”へと伝播し、連鎖していく。ふさぎこむ九条を勇気付ける夫・蓮(松下洸平)の「なんでもする」を受け取り、美雪に対して真相解明に全力で向き合うことを誓う九条の「なんでもします」。そして教職員たちに対しても「私たちはなんでもしなくてはいけない」と説いた九条が開いたホームルームの様子を見て心を動かされた我修院が、マスコミの前で世間に向かって宣言する、生徒に向き合うためなら「なんでもする」の言葉。

 第1話の際には、我修院が“今年の漢字”として「鱓」を掲げるという極めて奇特なチョイスをすることで、九条が“2周目”を実感するという流れが描かれた。それが今回、自ら率先して学校の代表として矢面に立とうとする彼の姿によってある種の伏線であったことが示される。「ウツボは自分よりも大きな敵にも口を開いて戦う」。これまでほとんど頼りなさげな姿しか見せていなかった我修院が生徒たちの前で見せた、教育者、あるいは責任者としての理想形ともいえる姿。“第2章”は思いがけないヒーローの登場から幕を開けたといえよう。

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