“プリキュアの定義”の変遷と“そこに込められたもの” シリーズ20周年と映画最新作に寄せて

 『プリキュア』シリーズ20作目にあたる『ひろがるスカイ!プリキュア』がABCテレビ・テレビ朝日系で好評放送中だ。そして9月15日には20周年記念映画である『映画プリキュアオールスターズF』が全国の劇場で公開される。

【予告】『映画プリキュアオールスターズF』

 新たな試みがあるたび世間に大きく取り沙汰される『プリキュア』シリーズ。それは、もはや国民的知名度を誇るシリーズでありながらも、「プリキュア」と呼べるものの定義を、少しずつ、けれど着実に更新し続けているからだろう。

 本稿ではシリーズが誕生してから『ひろがるスカイ!プリキュア』まで、20年間の「プリキュアの定義」の変遷をたどりつつ、その変化に込められているものを考えていく。

初期の『プリキュア』において、異世界の出身者はプリキュアではなかった

 初期の『プリキュア』シリーズにおいて、「プリキュアの定義」の中には「普通の女の子」であるという暗黙の了解があり、ここでいう「普通」は「我々が生きるこの世界」の女の子、の意味を含むものだった。

 『ふたりはプリキュア Max Heart』(2005年)に登場した3人目の戦士、シャイニールミナス/九条ひかりは、作中に登場する異世界·光の園に関係した人物で、出生を踏まえればいわゆる「普通の人間」ではない。

【公式】『ふたりはプリキュアMaxHeart』シャイニールミナス変身シーン【フルver】

 『ふたりはプリキュア Splash☆Star』(2006年)に敵組織の戦士として登場、のちにプリキュアたちの味方となり、最後まで共に戦うことになる霧生満(きりゅうみちる)、薫(きりゅうかおる)のふたりや、『Yes!プリキュア5GoGo!』(2008年)に登場した、パルミエ王国の妖精・ミルクが変身した戦士、ミルキィローズ/美々野くるみもまた、プリキュアと共に戦う女の子でありながら、プリキュアの名を冠していないキャラクターだった。

 のちに『プリキュアオールスターズ』シリーズ(長編映画としては2009年から開始)などにおいてシャイニールミナスとミルキィローズはプリキュアのひとりとして数えられるようになったが、少なくとも初期5年間の『プリキュア』シリーズ本編においては(我々の視点から見た場合の)異世界・異界の出身者は、なんらかの力に目覚めたとしても、その姿がプリキュアと定義されることはなかった。

 この暗黙の了解を破ったのが、『フレッシュプリキュア!』(2009年)で異世界にある敵組織の幹部・イースとして登場、のちにプリキュアとして生まれ変わったキュアパッション/東せつなである。これ以降、異世界の出身者や妖精でプリキュアの名を冠した戦士は何人も登場している。

【公式】『フレッシュプリキュア!』キュアパッション変身シーン【フルver】

 その後、プリキュアとなるキャラクターたちの属性はさらに多様化。『HUGっと!プリキュア』(2018年)に登場したアンドロイドであるキュアアムール/ルールーや、『スター☆トゥインクルプリキュア』(2019年)に登場した異星人であるキュアミルキー/羽衣ララなどは記憶に新しい。

【公式】『魔法つかいプリキュア!』 キュアミラクル、キュアマジカル変身シーン【フルver】

 『魔法つかいプリキュア!』(2016年)では、魔法界出身のキュアマジカル/十六夜リコが、キュアミラクル。朝日奈みらいとのコンビとして準主役的なキャラクターだった。その上で、異世界出身者のキュアスカイ/ソラ・ハレワタールが物語の主役となった『ひろがるスカイ!プリキュア』は、さらに一歩進んだものであることが分かる。

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