『ふたりのマエストロ』ラストシーンは今年ベスト級 指揮者親子の不器用な愛情に涙

『ふたりのマエストロ』ラストは今年ベスト級

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、弾けないギターが家にある花沢が『ふたりのマエストロ』をプッシュします。

『ふたりのマエストロ』

 本作は、アカデミー賞受賞作『コーダ あいのうた』のプロデューサーが贈る、新たな家族の物語。パリのクラシック界で活躍する指揮者の父と息子。親子で同業者というぎくしゃくした2人の関係が、ある事件をきっかけに変わっていく様子が描かれます。

 クラシックについて勉強していると驚くのが、教科書に載る音楽家の多くが、音楽関係者の両親から生まれているということです。モーツァルトやベートーヴェン、バッハの父も音楽家でした。レオポルト・モーツァルト、ヨハン・ヴァン・ベートーヴェン、ヨハン・アンブロジウス・バッハ……。彼らは作った曲の素晴らしさよりも、“神童の父”として後世に名を残しています。

 現代でも著名なミュージシャンや俳優、監督の子どもが同じ道を歩むと、必ず“2世”として囃し立てられ、比較されます。親の名声と戦わなければいけない子どもも大変ですが、自分の才能を凌ぐ子を持った親はどんな心境なのでしょうか。モーツァルトの父レオポルトは、息子が頭角を現し始めた頃から、ほとんど作曲をしなくなったといわれています。

 本作の主人公ドニとフランソワは、父子ともに成功を収めたマエストロ。しかし、明確な定年のない音楽業界は、身内であってもポストを争うライバル同士です。息子には大ベテランの父に対する引け目があり、父には今をときめく息子に対する嫉妬がありました。

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