アニメ『わたしの幸せな結婚』は影の演出に注目 キネマシトラスの“スペシャル”な作品に

 秀逸といえば、アニメ化されたことで良い効果が見られるのが、美世の心理変化ごとに変わる目元の影の演出だ。実家で虐げられてつらい毎日を送っている第1話や、まだ自信が持てない第2話の数シーンを観ると、前髪の影が大きく両目全体を覆って、伏し目がちで暗い女性の印象を与える。美世が久堂家にやってきて、生活が変わり始めてからは、両目の影の部分が次第に少なくなり、対照的に肌色の面積が増えた明るい印象になっている。第2話で清霞が朝食を口にして「うまい」とつぶやいた直後、美世のアップは両目が前髪に隠れることなくはっきりと表れて感激する表情が見て取れる。

 しかし第3話で鏡に写った自分の顔を見る場面や、清霞に隠し事をしている後ろめたさを抱く場面、第4話で香耶の嫌味に耐えながら立っている中盤以降は、再び自己嫌悪から塞ぎこんで両目全体に影を落としている。このように美世の心の浮き沈み、暗い気持ちと希望を感じる気持ちを、影の付け方ひとつでシーン毎に変化させる技法も優れている。

アニメ「わたしの幸せな結婚」 ノンクレジットエンディング|伊東歌詞太郎「ヰタ・フィロソフィカ

 キネマシトラスといえば、舞台とアニメのメディアミックスで盛り上げた『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(2018年)や、海外人気も高い異世界冒険もの『盾の勇者の成り上がり』(2019年)、そして残酷描写も臆せず挑戦したことで、劇場版が映倫審査でR15+指定を受けた『メイドインアビス』等々、意欲的なアニメ作りに挑戦してきたスタジオだ。

 『わたしの幸せな結婚』もまた、美男美女のロマンスだけに留まらない、試練を乗り越えながら強く結ばれて行く未熟な2人の姿に、視聴者もつい声援を送りたくなってしまう筋運びが見事である。もちろんこれは原作由来の面白さなのだが、キネマシトラスがこの作品を届けるために、どれだけ力を注いでいるかは、アニメ公式サイトの中にある“スペシャル”から「制作スタッフの各話おすすめシーン特集」のコンテンツをご覧いただきたい。美術、撮影、小道具、作画に至るまで、どのような工程で手がかけられているのかを直に見られる。アニメ本編はちょうど原作小説の1巻分を消化した辺りだが、この先どんなキャラクターが登場して、美世と清霞の関係性がどのように進展して行くかを、ドキドキしながら見守りたい。

参照

・https://book.asahi.com/article/14960237 
・https://book.asahi.com/article/14965954

■放送・配信情報
『わたしの幸せな結婚』
TOKYO MX:毎週水曜 23:30〜
サンテレビ:毎週水曜 24:30〜
KBS京都:毎週水曜 25:00〜
テレビ愛知:毎週水曜 26:05〜
BS11:毎週木曜 24:30〜
AT-X:毎週木曜 21:00〜
※放送日時は変更になる可能性あり
Netflixほか各配信サイトにて地上波同時配信 毎週水曜23:30〜
声の出演:斎森美世:上田麗奈、久堂清霞:石川界人、斎森香耶:佐倉綾音、辰石幸次:西山宏太朗、五道佳斗:下野紘、ゆり江:桑島法子
原作:顎木あくみ(KADOKAWA/富士見 L 文庫刊)
原作イラスト:月岡月穂
監督:久保田雄大
設定・監修:阿保孝雄
シリーズ構成・脚本:佐藤亜美、大西雄仁、豊田百香
キャラクターデザイン:安田祥子
色彩設計:岡松杏奈
美術監督:片野坂恵美(インスパイア―ド)
美術監修:増山修
美術設定:菱沼由典、曽野由大、吉﨑正樹
プロップ:高倉武史、ヒラタリョウ、みき尾
撮影監督:江間常高(T2スタジオ)
3DCG監督:越田祐史(スタジオポメロ)
着物デザイン:HALKA
編集:黒澤雅之
音楽:Evan Call
音楽スーパーバイザー:池田貴博
音楽制作:ミラクル・バス
音楽制作協力:キネマシトラス/KADOKAWA
音響監督:小泉紀介
音響制作:グロービジョン
脚本開発協力:森本浩二
アニメーション制作:キネマシトラス
製作:「わたしの幸せな結婚」製作委員会
©2023 顎木あくみ・月岡月穂/KADOKAWA/「わたしの幸せな結婚」製作委員会
©2023 Akumi Agitogi, Tsukiho Tsukioka/KADOKAWA/My Happy Marriage Partners
公式サイト:https://watakon-anime.com
公式X(旧Twitter):@watashino_info
公式Instagram:@watakon_anime
公式TikTok:@watakon_anime

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