『VIVANT』乃木憂助は堺雅人の集大成ともいえるキャラクター “エフ”が存在する意味は?

 スーツ姿の男が砂漠を彷徨うシーンから物語は始まったーー。

 タイトルとごく少数の出演者以外、初回オンエアまでその内容がベールに包まれていたTBS日曜劇場『VIVANT』。第3話では舞台が東京に移り、乃木憂助(堺雅人)がバルカ共和国で事件に巻き込まれるきっかけとなった誤送金問題の“犯人”が明らかになる。

 ただ、この“犯人”が誤送金問題のハンドルを握っていたとは考えにくく、おそらく彼女を操っている人物は他にいるのだろう。乃木はその“真犯人”に辿り着くことができるのか。ということで、ここでは本作の主人公・乃木憂助と、乃木を演じる堺雅人について考えてみたい。

 まずは第3話までで明らかになった乃木の特性をざっと並べてみよう。

1. 少なくとも3カ国語を自在に操る
2. CIA勤務の親友(元同級生)がいる
3. 乗馬が得意
4. 1kgまでなら片手で正確に重さを計れる
5. バルカの料理に精通
6. 両親は日本語話者で、砂漠で外国人集団に連れ去られた
7.“ エフ”と呼ぶもうひとつの人格が存在

 乃木を構成する要素で特に注目したいのが1と3と5と6。第1話で野崎(阿部寛)や薫(二階堂ふみ)とともにバルカ当局のチンギス(Barslkhagva Batbold)から逃げる際、乃木は華麗に馬を乗りこなした。この地に3年住んでいる薫や公安部・外事第4課所属の野崎はともかく、東京の商社マンである乃木がなぜ馬を自由に操ることができたのか。野崎に乗馬を褒められた乃木が「だんだん思い出してきました」と語っていたのも気にかかる。

 また、料理が趣味の野崎より、バルカ料理は香辛料を使用しないと乃木が詳しく知っていたり、バルカの言語を非常に流ちょうに話せたりと、乃木のバルカスキルは商社マンとしての立ち位置を越えている気もする。となると、彼はこの地に何らかのルーツがある人物なのかもしれない。そしてそれは両親の連れ去りと関係がある可能性も。

 おそらく2や4は早めに撒かれた伏線で、今後、乃木が“VIVANT”の正体(別班?)に迫っていく際、ルパン三世おたくのCIA職員・サム(Martin Starr)との高校時代のエピソードが提示されたり、片手で正確に重さを計れる特技が役立つ状況も描写されるのだろう。

 そして、6と7は連動していると考えるのが自然。父母(林遣都、高梨臨)が連れ去られたことが起爆剤となり、乃木の中にアグレッシブな別人格“エフ”を生み出した。乃木が迷ったり窮地に立たされると“エフ”が現れ、本体の背中を押すわけだ。

 と、ここまでわかっている乃木の人物像を予想も含めまとめてみたが、面白いのは謎を追う主人公自身の本当の姿もベールに包まれている点。大手商社同期の出世レースではビリといわれる目立たない男が思いもかけないスキルを宿し、自分を追い込んだ“VIVANT”の正体を探ろうとする。乃木にはまだまだ隠された秘密があるはずだ。

関連記事