コン・ユはなぜ年代ごとに人々を魅了し続けるのか? 表現者としての歩みを紐解く

 韓国トップスター俳優のコン・ユは、2023年7月10日に44歳となった。アイドル的な人気を誇った20代、多様なジャンルに挑戦した30代、そして確かな演技力と存在感で魅了する40代と、時代ごとに着実に役者としての印を残し、代表作も数多い。今後の待機作も注目すべき作品ばかりで、Netflixシリーズの韓国ドラマ『イカゲーム』のシーズン2にも“謎の男”としてシーズン1から続投することが発表され、「ロマンチックコメディの女王」といわれるソ・ヒョンジンとコン・ユが初共演となるNetflixの新ドラマシリーズ『トランク(原題)』の制作も発表された。オファーの絶えないコン・ユの魅力をあらためて紐解いていきたい。

 コン・ユは、大学生の時にケーブルテレビMnetでビデオジョッキーとして芸能活動をスタート。本格的な俳優デビュー作となったのは、2001年のドラマ『コン・ユの学校IV 〜転校生はプレイボーイ!?〜』。以降、映画製作に情熱を傾ける助監督役を演じた『スクリーン』でSBS演技大賞のニュースター賞を受賞、コン・ヒョジン演じる熱血教師とコン・ユ演じる理事長の息子で問題児の恋を描いた『乾パン先生とこんぺいとう』では一途な生徒役を熱演するなど、いくつかの作品で演技を重ねたものの、なかなか大ヒットといえるほどの作品には恵まれなかった。

『コーヒープリンス1号店』(写真:Everett Collection/アフロ)

 しかし、2007年のドラマ『コーヒープリンス1号店』でくすぶっていた状況は一変する。コン・ユ演じるイケメンしか雇わないカフェ「コーヒープリンス1号店」を経営する御曹司が、ユン・ウネ演じる家計のため女性だが男性と偽りカフェで働く店員に、戸惑いながらも惹かれていく姿が大反響。さらに、映画『パラサイト 半地下の家族』などのイ・ソンギュンらが取り巻く恋愛模様も交差し、コン・ユは今作でMBC演技大賞の優秀賞を受賞し、大ブレイク。一躍スターダムに上り詰めた彼は、三池崇史監督による日本映画『龍が如く 劇場場』にスナイパー役で出演し、より精力的に活動するかと思いきや、2008年に入隊した。

 演技において手探りだった俳優デビューから不遇の時代を超え、代表作を手に入れ、20代を駆け抜けたコン・ユ。入隊から除隊までの2年間、芸能活動から離れる間に発売された、タバコの煙をくゆらしているようなカットが表紙の写真集や、入隊の様子やインタビューなどを収めたプライベートDVDの姿も印象的だった。184cmの長身に小顔といった麗しい佇まいながら、現在の洗練された大人の魅力とは違う、あどけなさとワイルドさが同居するような時期といえる。やがて『コーヒープリンス1号店』の成功、そして兵役中の経験が、その後の作品選びに大きく影響することとなっていく。

 コン・ユは除隊後、映画に軸足を置くようになった。復帰作の映画『あなたの初恋探します』は日本語を話す姿やロマンチックなキスシーンがまばゆいラブストーリーながら、その後、社会派映画『トガニ 幼き瞳の告発』で俳優としてのキャリアのシフトチェンジを印象付けた。

 同作は、コン・ユが入隊中に原作小説を読み、自ら企画して映画化を実現させた主演作だが、実際に聴覚障害者学校で起こった性的虐待事件を題材にしており、目をそむけたくなるおぞましいシーンも多い。企画実現から撮影までかなりハードだったはずだが、熱意と失意に陥る美術教師役を演じたコン・ユの信念をすみずみまで感じさせた作品だった。映画がきっかけで事件は再捜査となり「トガニ法」が制定されるほど韓国社会を大きく動かし、同作でコン・ユは青龍映画賞の人気スター賞を受賞。役者として新境地を切り拓いた。

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