『真夏のシンデレラ』森七菜と間宮祥太朗の間に生じた思わぬ溝 劇中で冴え渡る小ネタも

 自分の名前を呼んでくれる人のことを好きになるというのは、“ネームコーリング効果”のことだろう。健人(間宮祥太朗)を名前で呼んだことがないという夏海(森七菜)に、愛梨(吉川愛)と理沙(仁村紗和)が距離感を詰めるよう言っていると、宗佑(水上恒司)が通りかかって理沙の名前を呼ぶ。7月24日放送の『真夏のシンデレラ』(フジテレビ系)第3話がこんなやり取りから幕を開けたとなれば、夏海と健人が互いの名前を呼び合って一気に接近する流れを期待してしまうのだが、そんなに簡単に物語が前へと進んでいかない“じれったさ”こそ、このドラマの醍醐味というやつだ。

 沖縄で行われるサップの大会に出場することが決まった夏海。優勝したら手に入る賞金で、すっかり立て付けが悪くなった食堂をリフォームしようと考え練習を始める。一方、健人は仕事で東京に戻らなくてはならなくなり、東京から夏海のことを応援すると約束。ところが、夏海の父・亮(山口智充)が人助けのために沖縄行きの資金を使ってしまい大会出場は困難に。必勝祈願のお守りを渡しにやってきた健人は、夏海から「大会に出ないことにした」と告げられ、挑戦もせずに諦めたものだと勘違い。2人の間に思わぬ溝が生じてしまうのである。

 その一方、守(白濱亜嵐)に呼ばれて日本一予約の取りづらいという美容室に連れていかれる愛梨。帰りが遅くなった愛梨を泊めるため、自分の部屋と偽って修(萩原利久)の家へと連れて行く守。今回のエピソードではついに海辺の町から飛びだす。しかも東京で暮らしている理沙の元夫の翔平(森崎ウィン)と、息子の春樹(石塚陸翔)が海辺の町へとやってくることでも物語の世界観は広がる。それでも“東京に戻る”ことや愛梨と守の一連などで東京から江ノ島までの距離感を引き続き感じさせながら、大雨に心配した健人が思いのほか楽々と駆けつけてしまうあたり、愛嬌ある予定調和は健在だ。

 よりにもよって(おそらく重要なプレゼンをすっぽかして)夏海のもとへと駆けつけた健人が見てしまったのは、夏海を支える匠(神尾楓珠)の姿。前回のエピソードで衝動的にキスをされたことで匠との距離を取ろうとしていた夏海だったが、匠からの謝罪をすんなり受け入れて今まで通りに接する。精神的な距離をあっという間に取り返せることが、物理的に距離が近いこと、すなわち“住んでる世界”が同じであることの圧倒的な強み。それを健人は大雨のなかで見せつけられたというわけだ。

 ところで今回の劇中は、なかなか小ネタが冴え渡る。理沙と宗佑の宅飲みシーンでのわかりやすい“プロダクトプレイスメント”に、美容室で髪を整えてもらう愛梨からただようホットペッパーのCMっぽさに、理沙&宗佑の『秒速5センチメートル』のくだりによって新海誠要素が提示された流れで夏海=森七菜のいる場所に大雨が降り注ぎ『天気の子』を想起させる。それだけでなく、夏海がサップのパドルを漕ぐ動作が食堂でほうきを掃く動作と重なる編集であったり、その直後の匠がなかなか言い出せないでいる間の取り方であったりと表現の幅の豊かさも際立つ。シンプルな青春譚だからこそ、テレビドラマが単にストーリーを追うだけのものではないと改めて気付かせてくれるのだろう。

■放送情報
『真夏のシンデレラ』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:森七菜、間宮祥太朗、神尾楓珠、吉川愛、萩原利久、白濱亜嵐、仁村紗和、水上恒司、大西利空、森崎ウィン、桜井ユキ(友情出演)、山口智充ほか
脚本:市東さやか
演出・監督:田中亮
プロデュース:中野利幸
音楽:末廣健一郎、MAYUKO
主題歌:緑黄色社会「サマータイムシンデレラ」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作・著作:フジテレビジョン
©︎フジテレビ
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