『君たちはどう生きるか』は宮﨑駿の集大成 観客が固唾を飲んで鑑賞した朝8時の渋谷上映

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、この映画を観るために早寝早起きをした橋本が『君たちはどう生きるか』をプッシュします。

『君たちはどう生きるか』

 宮﨑駿監督10年ぶりの最新作『君たちはどう生きるか』。公開前からプロデューサーの鈴木敏夫は「映画の内容を事前に一切明かさない」という異例の宣伝方針を掲げた。あらすじも明かさず、予告編の公開も、声優の発表もしないまま初日を迎えることなった。朝8時過ぎごろ完売している劇場に入るとほとんどの人が着席していて、静かに映画が始まるのを待っていた。席は埋まっているのに誰も話さず何も映し出されていないスクリーンを見つめている。ポップコーンを食べる音すら聞こえず、「この緊張感は何だ」と思い席についた。思い返すと私自身も何も情報を知らないで映画を観ることなど何年していなかっただろうかと思い返していたら場内が暗くなり映画が始まった。

 映画はいきなり火事を知らせるサイレンの音から始まった。主人公が眞人と言う名前であること、その母親が入院している病院で火事が起きていることなどが説明され、眞人が病院に向かって走り出す。戦争で東京を離れるというナレーションが入りタイトルが映し出された。冒頭のみ書いたが、作品の内容については時期尚早なので触れずにおきたい。

 この映画を観て宮﨑駿作品の集大成だなと感じた。戦時中、戦後日本が舞台ではあるが、かなりファンタジー色が強く、物語としては摩訶不思議な話でもある。しかし作品を観ていると、今までのジブリ作品のモチーフ、カメラワークで宮﨑作品の歴史を感じることができる。「この描写は『千と千尋の神隠し』みたいだ!」「ここは『ハウルの動く城』、『となりのトトロ』」のように感じることができるので、ジブリ作品に関心のある人にとっては今作は必見だ。私は映画を観た後、三鷹の森のジブリ美術館に行った時の感情を思い出していた。

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