山田裕貴&赤楚衛二の演技合戦に震える 『ペンディングトレイン』で見えた本当の“強さ”

 「やれるだけ、やってみよう」と常に自分を奮い立たせるためおまじないのように唱えていた優斗の言葉も、誰かと一緒に言い合えたなら、肩組み合いながら言い合える存在がいたならばもっともっと心強い。結果はどうあれ絶望はうんと遠のく。くそみたいな世界だって“生きてみてもいいかな”と思える。飛び乗ったその列車がどこに辿り着くか、どこに向かっているかわからなくたって、その旅に、人生に参加してみようと思えるだろう。そんな直哉の変化を、一匹狼でずっとやってきた彼を間近に見てきた美容院オーナーのすみれ(山口紗弥加)は「強くなった」と言っていた。強さは、隙なく一人で背負い込んで立っているところに宿るには限界がある。誰かに懸けたり、委ねたり託したりできる信じる力こそ“強さ”を何倍にもしてくれるのだろう。

 優斗を見る紗枝(上白石萌歌)を遠くから見つめていた直哉という3人の構図が、直哉を眼差す紗枝の視線を嬉しそうに見守る優斗に変わっていく、そんな感情の機微が盛り込まれ、時間はどうしたって未来にしか進まないことを教えてくれていた。また紗枝に「俺はもうあんたのことなんて忘れた」と言って彼女を巻き込むまいと遠ざけていた直哉の口から「一生忘れられない、忘れたくない」という素直な告白が聞けた。弟一人守れなかった自分が誰かの生活や人生の一部になんてなれないとでも思っていそうな直哉だったが、誰かの人生に巻き込まれたり巻き込んだりしながら、持ちつ持たれつで人は生きているものだ。ここにも彼が身に付けた“強さ”が垣間見えた気がした。

 今この瞬間を必死に積み重ねていくこと。手加減なしのぶつかり合いを見せてくれた彼らに恥じぬように、今ここに確かにある当たり前ではない自身の人生に夢中で進みたい。

■配信情報
金曜ドラマ『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』
TVer、Paraviにて配信中
出演:山田裕貴、赤楚衛二、上白石萌歌、井之脇海、古川琴音、藤原丈一郎(なにわ男子)、日向亘、片岡凜、池田優斗、金澤美穂、宮崎秋人、村田秀亮(とろサーモン)、萩原聖人、ウエンツ瑛士、西垣匠、志田彩良、白石隼也、大西礼芳、坪倉由幸(我が家)、山口紗弥加、前田公輝、濱津隆之、杉本哲太、松雪泰子
脚本:金子ありさ
演出:田中健太、岡本伸吾、加藤尚樹
プロデューサー:宮﨑真佐子、丸山いづみ
編成:吉藤芽衣、平岡紗哉
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/p_train823_tbs/
公式Twitter:@p_train823_tbs
公式Instagram:p_train823_tbs

関連記事