門脇麦に聞く、映画で“残す”ことの大切さ 子どもを巡る社会問題を白石和彌と考える

白石和彌「人間がやれることってこれぐらいなんだな」

ーー『渇水』に参加したことについて、1人の役者としてどういう意味を持っていますか?

門脇:私は映画はエンターテインメントであるべきだと思います。でも観たら胸が苦しくなるような、例えば戦争の物語とか、本当の事件の映画とかもやっぱり残さなくちゃいけないと思っていて。もちろんそれは小説とかでも残せるけど、やっぱり私は映像で、映画で、そういうものを残していくってすごく大切なことだと思っています。この作品は読んだときに、そういう作品の1つになるだろうと思ったので、この作品に参加することにとても意義を感じました。

ーー白石さんも企画段階でそうした社会的意義の部分が一番引っかかっていましたか?

白石:社会的意義についてはそこまでかもしれないですね。もちろん、原作がこのストーリーを展開していくうえで逃れられないものを抱えているので、むしろ“それをやろう”ということはもうなくて。僕にとっては岩切という男が子どもたちのためなのか、自分のためなのか、よくわからないけど、水道で本当はやっちゃいけないモラルの一線を超える、あの瞬間を僕は見たかったんですよ。そして実際に観て「この瞬間のためにこの映画は存在してるんじゃないかな」と思えたんです。あれが白眉なところは、原作とは違う展開であれを見たからこそ「たぶん子どもたちは生きていける」と観客が思えることだと思います。やっぱりあのシーンこそが、この映画の一番のストロングポイントになるんじゃないかと思いました。だからそのことがあったうえで、社会問題とか今や誰もが考えざるを得ないことを改めて世の中に打ち出すってことは重要なことだと思ってました。

ーー門脇さんの印象に残っているシーンはどこですか?

門脇:やっぱり最後ですね。自分がお母さんの役を演じたからかもしれないんですけど、この作品は姉妹が主人公の映画のように思えていたんです。でも、最後に「やっぱり岩切の映画なんだな」と思いました。

白石:「もっと勢いよく!」って思ってしまうんだけど、でも「人間がやれることってこれぐらいなんだな」という感じもたまらないんですよね。

白石和彌

ーーなるほど。私も本作を観て、最後は白石さんの映画のエッセンスを感じていたのですが、そのように客観視されていたのですね。

白石:やっぱり僕は何かが麻痺しちゃってるんで(笑)。あのリアルな感じはなかなかやろうと思ってやれないですかね。

門脇:私もそこを楽しみにずっと苦しいのを観ていたので、「あれ?」って思っちゃいました(笑)。

白石:いや、あれがいいんだよ。

ーー作品が1時間と少しの時間をかけて紡いできた最後のクライマックスを“あえて”ああいうもので描いた、ということですね。

白石:1人の人間がやれることってきっとあんなことなんだろうなっていう象徴になってますよね。

ーーお話を聞いて本作への解釈がガラリと変わりました。改めてこの作品をどのように見ていますか?

白石:でもさっき麦ちゃんも言ってたけど、髙橋監督の人柄がすごく出ている作品になっていると思います。

門脇:本当にそうだと思います。カッコつけたり気張ったり、それこそ"いい映画撮ろう”とかじゃなくて、本当に実直です。

門脇麦

白石:それが映画『渇水』の読後感の優しさに繋がっている感じがしています。原作を読んだ人は悲惨な終わりが待ってるんじゃないかと思ってしまうかもしれないですけど、決してそんなことはないです。これを今の時代に置き換えて、髙橋さんが原作の河林(満)さんとコラボしたことによって、光が見える優しい作品になったと思う。なので僕らは今この現実世界で生きていく中で「きっとこういうことが大事なんじゃないの?」というものを感じる作品になってるのかなと思います。

門脇:もちろんそういう社会問題の話でもありつつ、やっぱりあの姉妹と、生田斗真さんと磯村勇斗さんの心の交流の話なので、やっぱ人間いいよねってどこかで思えます。反面、「やっぱ人間は難しいよな」と思うところも最後に残るとは思いますが、私は「やっぱり人っていいな」って、観終わった後に思いました。なのでそういう映画になっているんじゃないかな。あとは、子どもを大事にしましょう。本当に。

白石:社会的にもね。

門脇:悪いのはあのお母さんだけじゃない。だって別に払いたくなくて払ってないわけじゃないですから。もっと子どもたちを大事にしましょう。

『渇水』門脇麦さん、白石和彌さんからメッセージ到着!

■公開情報
『渇水』
全国公開中
出演:生田斗真、門脇麦、磯村勇斗、山﨑七海、柚穂、宮藤官九郎、宮世琉弥、吉澤健、池田成志、篠原篤、柴田理恵、森下能幸、田中要次、大鶴義丹、尾野真千子
原作:河林満『渇水』(角川文庫刊)
監督:髙橋正弥
脚本:及川章太郎
音楽:向井秀徳
企画プロデュース:白石和彌
主題歌:向井秀徳「渇水」
配給:KADOKAWA
©『渇水』製作委員会
公式サイト:https://movies.kadokawa.co.jp/kassui/

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