役所広司&吉沢亮が灯す希望の“炎” 『ファミリア』は日本に暮らす“私たち”の映画だ

 吉沢演じる学は、役所広司演じる父・誠治の「希望」であると共に、本作における「希望」の象徴でもある。まるで、存在そのものが光り輝いているかのようだ。彼は、ただ生きていくだけで大変な、過酷な日常を生きるマルコスに対し「夢を持つことは、怖いことじゃないよ」と真っ直ぐに語り掛けることのできる人物だ。そこには、彼が父・誠治と幼い頃に亡くした母の愛を一身に受けて育ち、やがて夢を抱いて世界に飛び立ち、活躍し、そこで愛する人を見つけ、また父のいる故郷という最も大切な場所に戻りたいと願う、順風満帆な彼の人生そのものの、そして「いろんな世界を見てきた」彼の経験そのものが裏打ちされていた。そんな誠治の「自慢の息子」であり、誰にとっても憧れの存在とも言える彼を襲う悲劇によって、本作の希望の「炎」は一度消える。その時人々はどうするのか。

 本作は「家族」の物語であると同時に、「家族を奪われた人々」の物語でもある。マルコスたち若者を追い詰める、半グレ集団のリーダー・榎本(MIYAVI)においても同じことが言える。愛する妻と子を理不尽に奪われた過去が、彼の心を燃やし続ける。彼は、妻子の命を奪った犯人と同じブラジル人だからという理由で、やり場のない怒りを、ブラジル人の若者たちにぶつけることで晴らそうとする。でも本当に、それしか方法がないのだろうか。理不尽な暴力の連鎖を断ち切ることはできないのだろうか。小さな山里から、目の前にいる人と出来事と真摯に向き合うことを通して、世界と真っ直ぐに対峙するかのような誠治の生き様は、まるで争いの絶えない世界における1つの指針であるように感じた。また、「遠く離れた土地で、話す言葉も育った環境も違うのに」寄り添い、互いに手を取り合って、家族になろうとする彼らが灯し、守り、見上げる炎は、私たちの「明日」を灯す道しるべであるとも言えるのである。

■リリース情報
『ファミリア』
6月2日(金)発売

<Blu-ray>
5,280円(税込)
<DVD>
4,290円(税込)

【Blu-ray特典映像(約62分)】
・予告編
・TVSPOT集
・ メイキング映像
・完成披露上映会&公開記念舞台挨拶
・ファミリア・トーク

【DVD特典映像】
・特報+予告編

※商品の仕様は変更となる場合あり
※レンタル同日リリース

発売元:キノフィルムズ/木下グループ
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
©2022「ファミリア」製作委員会

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