『クリード 過去の逆襲』は“地元の悪いツレの逆襲”!? マイケル・B・ジョーダン監督の功績

 とはいえもちろん、最大の見せ場はボクシングのシーンだ。マイケル・B・ジョーダンが日本のアニメから影響を受けたと語るだけあって、今までの『ロッキー』や『クリード』のボクシングのシーンとは大きく異なっている。スローモーションを使って「敵の隙をどうやって突いて、致命的なパンチをヒットさせているのか?」を明確に見せるシーンはまだしも、戦っている最中に完全な精神世界に飛んでしまうのは、明らかにアニメの影響だ。本作とは逆に「アニメで実写を」なアプローチで作られている『THE FIRST SLAM DUNK』(2022年)で観たようなシーンが出てくるのも、なかなか興味深い。また、これまでのシリーズよりも、全体的にダーティーなテクニックを見せてくれるのも面白い。『はじめの一歩』の沢村や間柴のような、「故意の事故」で流れを引き寄せるファイトスタイルをここまで大々的に取り上げるのは非常に新鮮に感じた。なお、幼いアドニス少年の部屋が『NARUTO-ナルト-』『機動戦士ガンダム』『ルパン三世』のグッズで溢れており、「これはアドニスの部屋というよりジョーダンの部屋なのでは?」と思われたが、それはご愛嬌と受け流そう。

 粗削りな部分や、大人の事情を感じる部分はあれど、しかしマイケル・B・ジョーダンの俳優兼監督としての丁寧な仕事が十分に感じられる一本だ。本編後のアニメが真剣に予想外というサプライズもありつつ、若い勢いが感じられる。なお、100%ないかもしれないが、もしマイケル・B・ジョーダンがこれを読んでいて、まだ日本にいるなら、『THE FIRST SLAM DUNK』を観て行ってほしい。あと、NowのJapanでMost FamousなOTOKO-GI comic 『ドンケツ』も全巻買って帰るべきだ。これらに触れるだけで、ジョーダンはさらに高く飛べる気がすると言っても過言ではない。

■公開情報
『クリード 過去の逆襲』
全国公開中
監督:マイケル・B・ジョーダン
製作・原案:ライアン・クーグラー
出演:マイケル・B・ジョーダン、テッサ・トンプソン、ジョナサン・メジャース、ウッド・ハリス、フロリアン・ムンテアヌ、ミラ・ケント、フィリシア・ラシャドほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
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