芳根京子が語る、広がる役幅と挑戦の姿勢 「“あのときと同じ”というのは悔しい」
芳根京子の役幅はどんどん広がっている。ダークな雰囲気の役を深みをもたせて演じるのが巧みな俳優だが、風変わりなキャラクターや等身大の役の演技にもリアリティがあり、演じる役すべてがハマり役だと思わされてしまう。“知財”をテーマにしたドラマ『それってパクリじゃないですか?』(日本テレビ系)でも、また新たな一面を見せている。
芳根が演じているのは、ジャニーズWESTの重岡大毅演じる北脇と一緒に知財部で奮闘する社員・亜季。自分の思うことに実直で熱心な女性だが、どちらかと言えばふわふわとしたキャラクターだ。芳根が直近まで演じていた役とのギャップはかなり大きいが、どのようにして亜季役を作り上げたのだろうか。自身の俳優としてのこだわりから、ドラマそのものに対して感じていることまでを聞いた。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】
「自分で自分がよくわからなくなってるかもしれないです(笑)」
ーー芳根さんは亜季役をとても自然に演じています。実際に演技をしていくなかで、亜季役について、いまどのように考えていますか?
芳根京子(以下、芳根):自分がクランクインしたときに思っていた10倍ぐらいのスピードで成長しています。なので自分でもビックリするぐらいハッキリと「こうしましょう!」って相手の目を見て言えるようになっていたんです。こんなにハキハキとものを言っていいのかなと思ったのですが、監督からも「亜季ちゃんはそこまで成長してて大丈夫だよ」と言われました。だからどんどん「えっと……」とか「何か……」みたいな曖昧な言葉が台本からなくなっていってるんですよね。なんなら亜季が説明する立場に回ってたりもして、成長のスピードがすごく速い女性だと思っています。純粋ゆえの吸収力の高さがあって、いいものを全て自分に蓄えるパワーみたいなものを演じるうえで感じています。
ーー実際に、素直な人は成長が早いというのはよくある話ですよね。
芳根:真っ直ぐであるがゆえの怖さもあるんだけど、でも走り出したらすごいスピードを出すのが魅力な女性です。とにかく行動力があって、自分の足でちゃんと進む子だから、きっと自分に足りない部分も分かっているんだと思います。
ーーご自身と亜季は似ていると思いますか?
芳根:どうなんだろう、遠くはないかなって思いますね。感覚的に生きているところは似てると思います。でも私は他人の目を気にして意見を言えなかったり、どう思われるかを考えてしまうんです。もちろんそれがいいときもあるとは思うんですけど、亜季みたいなパワーは私にはないなと思います。亜季は他人のことを考えていないわけじゃないけど、特に回が進むにつれて自分の意見を言葉にし始めています。自分自身のことを信じてる感じが、亜季の魅力なのだと思います。
芳根:撮影していく中でやりやすくはなりましたね。今までキレキレな役が続いてたので、初めはぽわぽわとしてるのがなかなかペースがつかめなくて、監督から「ちょっとキレが良すぎるかも」とか言われてました。でも最近はそれも言われなくなって、前室で座ってボーっとしてると、みんなに「足湯に浸かってるみたい」って言われるぐらい、多分亜季の影響でぽわぽわとしてます(笑)。引っ張られてるのだと思います。
ーー監督とそうした話し合いを結構されていたんですね。
芳根:作品を観るのは視聴者の方だから、私はどの作品でも、主観よりも客観的にどう見えるかを気にしています。自分で考えて演じてても、そう見えてなかったら意味がないと思うので、監督と「こういうふうに思ってやったんですけど、そう見えてましたか?」ということを確かめてます。「見えたよ」って言われて「じゃあ大丈夫です」となるので、そういうコミュニケーションを監督だったりプロデューサーチームと常に取るようにしています。
ーー先ほど亜季について、自分の言葉を言えたり行動力があるキャラクターだと言われていましたが、芳根さんも言語化を大切にされている方だと感じます。
芳根:でも私も行動は起こす方かな。考えてるよりも見た方が早いと思うので。この仕事をしてると体験するもの全てが役に立つと思うから、やりたいと思ったらやるし、いろんな景色を見たいと思って日々を過ごしています。
ーー芳根さんは本当に多くの役を演じられていると感じます。ご自身でも役幅の広さは意識されているんですか?
芳根:私は、身長も平均的ですし、何かにズバ抜けていると自分で思えるところが正直ありません。学生時代はずっと個性がないと思っていました。でも、きっとそのおかげで本当にいろんな役をやらせてもらえていると思うので、よかったと思ってます。いろんな役をやらせてもらえるのは、すごく楽しいです。今はぽわぽわしてる役をしているのに、つい1年前までは、むしろぽわぽわしてる人にパッパッと指示を出すようなことをしていて、北脇さんの立場だったなとか思うとすごく面白いです。
ーーそういうふうに個性がないのが長所と思えたのはいつからですか?
芳根:23歳〜24歳ぐらいです。「あ、これでいいんだ」とプラスに思えました。
ーー何かきっかけがあったんですか?
芳根:ある1年間で演じさせて頂いた役が、オタク女子、華道のお家元のお嬢様、“バカ枠”採用のテレビ局員、そして顔に傷が入っている女の子を演じました。私の中では衝撃的な1年で、全部終わってから写真を並べてみると、あまりにキャラクターが違いすぎて「うわ楽しい!」と思ったんです。お芝居ってこんなに、見るからに違う人の人生を生きれるんだと思うと、振り切りたくなっちゃいます。どの役とも被らないように表情とかも毎回変えたくなっちゃう。やっぱり「あのときと同じ」というのは悔しく思うんです。でも引き出しも無限にあるわけではないので、常に新しい表情を出せるように模索をしています。
ーー役幅の広さもですし、どの役も「芳根さんってこういう人なのかな?」と思ってしまうほど自然に演じられている印象です。
芳根:ありがとうございます。でも、あれほぼ私でしたって役はこれまでに1個もないと思います。自分で「この役はほぼ私だ」なんて思ったことないかもしれない。もう自分で自分がよくわからなくなってるかもしれないです(笑)。でもそれもなんか面白いなって。お芝居をする上では、本望だと思います。