『らんまん』伊礼彼方が放つ重厚な存在感 万太郎と寿恵子の関係にどんな影響を与える?
伊礼は特に、その役柄が抱える弱さまで投影するのが見事だ。映像作品よりもさらに時間的、物理的な制約がある中で起承転結があり、それぞれ際立った特徴のあるキャラクターが配置される舞台作品において、一見したところその役の言動には表立って出てこない本音やそうならざるを得なかった背景を、行間やふとした立ち居振る舞いで立ち昇らせてくれる。これは役柄のみならず、作品全体の奥行きを大きく深く広げることに寄与しているだろう。
そして、そんな伊礼の役への深い解釈こそが、ミュージカル『レ・ミゼラブル』ジャベール役での読売演劇大賞男優賞ノミネートに繋がったのだろう。 本作の高藤もまだ詳細な背景は明かされてはいないものの、上辺だけの欧米化の推進や文明国を装おうとする外交政策に首を傾げており、本質を見抜ける人物のようだ。自身も留学経験があり、欧米諸国に対する圧倒的な遅れやその差を肌で実感しているからこそ、自分のその経験を鹿鳴館外交に用いなければならないことに虚しさを滲ませていた。そんな彼にとってもまた寿恵子はミューズのような存在になるのだろうか。
万太郎とは全くタイプの異なる高藤の出現が、寿恵子との関係にどんな影響を与えるのか楽しみだ。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、広末涼子、松坂慶子ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK