第76回カンヌ国際映画祭開幕 是枝裕和『怪物』、北野武『首』など注目作を紹介

女性監督の作品が歴代最多出品

 今回のカンヌの注目ポイントは、巨匠たちが勢揃いすることだけではない。今年はコンペティション部門に出品された21作品のうち、7作品が女性監督によるもの。これは歴代最多だ。なかでも注目は、チュニジアのカウテール・ベン・ハニア監督がテロ組織に入った若い女性たちをドキュメンタリータッチで描いた『LES FILLES D’OLFA(原題)』。ハニアの前作『皮膚を売った男』(2021年)は第93回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた。すでに実績のある彼女の健闘が望まれる。

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 また『ロマンスX』(1998年)などで女性のセクシュアリティを描き続けてきたカトリーヌ・ブレイヤ監督の『L'ete dernier(原題)』、第71回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した『幸福なラザロ』(2018年)のアリーチェ・ロルヴァケル監督による『La chimera(原題)』などにも注目だ。彼女たちのうちの誰かがパルム・ドールを獲得することになれば、ジェーン・カンピオン、ジュリア・デュクルノーにつづく史上3人目のパルム・ドール受賞女性監督となる。

北野武監督作『首』はカンヌ・プレミアで上映

 日本勢ではもう1人、カンヌ・プレミアで上映される北野武の『首』にも注目が集まる。カンヌ・プレミアは、2021年に新設された部門。それまでコンペティション部門から溢れた良作は「ある視点」部門で上映されていたが、それでは新人監督の育成を目的とする同部門の意義が薄れてしまうため、この部門が設けられた。

北野武の“乾いたリアリズム”は『首』ではどう生かされる? 異色の時代劇になる予感

北野武による6年ぶりの監督作『首』が今秋に公開されることが決定した。舞台となるのは、戦国時代、日本史上もっとも有名な事件のひとつ…

 『首』は、羽柴秀吉や明智光秀ら織田信長の家臣が、反乱を起こして姿を消した荒木村重を追う時代劇。今年秋に日本公開が決定している本作は、信長の跡目をめぐって欲望と策略が入り乱れ、やがて本能寺の変へとなだれ込んでいく歴史スペクタルだ。バイオレンスとユーモアが融合した、“世界のキタノ”らしい作品となっているという本作。コンペティション部門での出品ではないが、どのような評価を得るのか期待したい。

 世界三大映画祭の1つであり、最大の映画マーケットであるカンヌで評価を得ることは、映画監督たちにとって大きな名誉だ。今年のコンペティション部は、例年にも増して実績のある監督たちの最新作が勢揃いし、話題作が渋滞している。世界中の批評家から最も高い評価を受けるのは、一体どの作品だろうか。今後の賞レースにも影響してくる権威ある映画祭だけに、その結果は我々一般の観客の興味を惹きつける。パルム・ドールをはじめとする各賞の行方に注目していきたい。

■公開情報
『怪物』
6月2日(金)全国ロードショー
監督・編集:是枝裕和
脚本:坂元裕二
出演:安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、角田晃広、中村獅童、田中裕子
企画・プロデュース:川村元気、山田兼司
音楽:坂本龍一
製作:東宝、ギャガ、フジテレビジョン、AOI Pro.、分福
配給:東宝、ギャガ
©2023「怪物」製作委員会
公式サイト:gaga.ne.jp/kaibutsu-movie/
公式Twitter:@KaibutsuMovie
公式Instagram:@kaibutsumovie

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