水野美紀、『合理的にあり得ない』で光る“悪役”ぶり バラエティでも際立つバランス感覚

水野美紀、バランス感覚が武器に

 現在放送中の『合理的にあり得ない~探偵・上水流涼子の解明~』(カンテレ・フジテレビ系)は、事件を丹念に捜査して犯人を探していく単なる推理ドラマではない。女探偵・上水流涼子(天海祐希)が対峙するべき“敵”はすぐにはっきりする。その“敵”が行っている“あり得ない”悪事を証明するための駆け引きを、時にハラハラしながら楽しむドラマである。

 5月8日に放送された第4話の“敵”は「マジェスティックビューティーラボ」の院長・愛原樹里亜(水野美紀)。彼女は、額のアザをを消す施術を受けるためにクリニックを訪れた西田真紀(市川由衣)に無認可の強力な薬を使用。一時的にアザが消えるが、半年後にはアザがさらにひどくなって浮かび上がってきた。治すには海外で整形するしか解決手段がなく、真紀は涼子に樹里亜から必要な治療費を奪ってほしいと依頼する。

 相棒である貴山伸彦(松下洸平)を樹里亜の秘書として送り込み、カルテに記載できない違法な薬品や施術が書かれた黒皮の手帳の中身を明らかにすることで、治療費の交渉に臨んだ涼子。この場面に両者の性格の違いがはっきりと見て取れる。涼子は樹里亜に向かってまくしたてるように話していたが、当の樹里亜は「それで?」「何が目的?」と多少の動揺を見せつつも、冷静で淡々と返答した。決して尻込みしているわけではない。樹里亜は押せ押せムードで迫ってくる涼子に負けない圧を発揮していた。その悪びれない様子がさらにタチの悪い“悪役”っぽさを醸し出している。

 一筋縄ではいかなそうな樹里亜を見事に演じている水野美紀は、平々凡々な人間を演じさせてもばっちりハマる。『魔法のリノベ』(2022年/カンテレ・フジテレビ系)では、「まるふく工務店」に寝室を分けるためのリノベーションを依頼する夫婦の妻・千聖を演じた。千聖は営業職のいわゆるバリキャリ女性。自宅のリフォームをするにあたり、仕事で疲れた時は一人でゆったり眠りたいと夫婦別寝プランを希望するが、夫には言い出せず小梅(波瑠)にこっそり相談していた。千聖は長年連れ添っている夫に遠慮を見せるちょっとかわいらしい女性だ。

 また、『星降る夜に』(2023年/テレビ朝日系)では、生まれつき耳が聴こえない一星(北村匠海)が務める「遺品整理のポラリス」の社長・千明を演じた。千明はポジティブで自由な性格で、それに影響されてか、人の死を間近に感じる遺品整理を仕事にしているにもかかわらず、ポラリスの職場の雰囲気は明るい。千明は周りによく気を配っており、誰かが悩んだり立ち止まっているときはさりげなく言葉をかけてくれるのである。千明は広い心とあたたかな優しさを持っている人物なのである。水野の演じる役柄は、その時々で性格が全く異なるが、どの人物もドラマの雰囲気を壊すことなく、ストーリーを盛り上げてくれるのである。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる