『らんまん』はなぜ“安心感”のある朝ドラに? 視聴者の思いと重なる寿恵子の言葉

『らんまん』なぜ“安心感”のある朝ドラに?

 東京編で重要な人物になるのは、万太郎のちの妻・寿恵子(浜辺美波)。第3週ですでに運命的な出会いを果たしている万太郎と寿恵子だが、第6週では東大のある町・根津界隈で運命の再会をする。寿恵子には「カエル」と名乗っていた万太郎だが、再会ではちゃんと本名を名乗る。「カエルじゃのうて人間です」と言う万太郎の言葉を自室で反芻する寿恵子。そのあと滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』を読んで、その言葉、設定、展開の魅力に「尊い」とうっとりする。彼女は「カエルのお殿様」(第13話)というファンタジックなキャラを受け入れることができる素質を持っていたのである。Aと思っていたら実はBだったというのは、例えば歌舞伎では「見顕し」という。カエルじゃなくて人間というのはバレバレとはいえ、「見顕し」の一種。寿恵子が読んでいた『八犬伝』の一節も「実は」からはじまっていて、彼女は「見顕し」のパターンを好んでいるのであろう。

 この「実は」のパターン、悪者に見えて「実は」の倉木であったり、毒草に見えて「実は」のドクダミであったりと、第6週を彩っている。

 物語を愛する寿恵子というキャラクターは、物語の基本構造の整った『らんまん』にふさわしい。『らんまん』を観て、「この展開、セリフ、すばらしい」と観ながら、しびれている視聴者と寿恵子が重なる。そして、植物と読本、ジャンルは違うが、家に本だらけの万太郎と寿恵子。気が合いそうだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、広末涼子、松坂慶子ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK

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