アニメ『アイドルマスター シャイニーカラーズ』への期待と懸念 “実在性”にどう挑む?

 だからこそ『シャニマス』のアニメ化は、それ自体が物語化になってしまうのではないかという懸念がある。映像化の宿命として、あるコンテンツを別のコンテンツで表現する場合、そこに必ず翻案の必要性が出てくる。その過程で解像度を低くしたり、情報が入れ替えたりするのは避けられないことだ。これはなにもぐちぐちと鬱屈した感情で大好きな原作が汚されてしまうことに対するお気持ちの表明として「アニメ化はよくない」といっているわけではない。解像度を低くするのも、情報を入れ替えたりするのも、映像化に必要なことだし、それをしないことで大変なことになるのは目に見えている。そもそも前提として、アニメは面白くなければいけない。様々な人が関わり、お金のかかるものなのだから、自己満足の芸術を作るわけにはいかない。しかし、『アイドルマスター シャイニーカラーズ』がアニメに翻案されるとして、実在性への一貫性は保たれるのだろうか?という懸念はついてまわる。

 一方で本家『アイドルマスター シャイニーカラーズ』が実在性を愚直に追求しつつ、ハイクオリティのシナリオを実現しているわけなので、「面白さ」と「実在性」は決して矛盾するものではない。また、アニメ『アイドルマスター シャイニーカラーズ』の制作は『シドニアの騎士』(2014年)のアニメを手がけた3DCGアニメーションの老舗ポリゴン・ピクチュアズである。個人的意見をいうと、3DCGアニメーションは下手すればその虚構性を際立たせてしまうものの、うまくいけば「実在性への追求」において、有利に働くのではないかと思う。そういう期待がある。

 TVアニメにも実在性を求めるのはかなり血迷った行為だと思うが、血迷ってこそ『アイドルマスター シャイニーカラーズ』。その自覚はないだろうが、シャニマス運営のスタンスはほとんど『ブレイド3』(2004年)の撮影現場でブレイドと呼ばれなければ返事をしなくなったウェズリー・スナイプスとそう変わりはない。駄作と名高い『ブレイド3』だが、ウェズリー・スナイプスは超最高なので、是非そのまま『ブレイド3』のウェズリー・スナイプスであってほしい。その結果、もしかしたらものすごい作品ができるかもしれない。

■作品情報
アニメ『アイドルマスター シャイニーカラーズ』
2024年春TVアニメ放送予定
劇場先行上映:TVアニメ放送に先駆け、全国の劇場にて12話を全3章にて先行上映
第1章:2023年10月27日(金)~11月16日(木)
第2章:2023年11月24日(金)~12月14日(木)
第3章:2024年1月5日(金)~1月25日(木)
企画・製作・原作:バンダイナムコエンターテインメント
監督:まんきゅう
シリーズ構成・脚本:加藤陽一
アニメーション制作:ポリゴン・ピクチュアズ
キャスト:
関根瞳(櫻木真乃)、近藤玲奈(風野灯織)、峯田茉優(八宮めぐる)、礒部花凜(月岡恋鐘)、菅沼千紗(田中摩美々)、八巻アンナ(白瀬咲耶)、希水しお(三峰結華)、結名美月(幽谷霧子)、河野ひより(小宮果穂)、白石晴香(園田智代子)、永井真里子(西城樹里)、丸岡和佳奈(杜野凛世)、涼本あきほ(有栖川夏葉)、黒木ほの香(大崎甘奈)、前川涼子(大崎甜花)、芝崎典子(桑山千雪)
配給:松竹ODS事業室
©Bandai Namco Entertainment Inc.

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