『シャザム!~神々の怒り~』ネタバレ解説 アメコミ好きならニヤリとするシーンも
こんにちは、杉山すぴ豊です。ここ最近のマーベル、DCのアメコミヒーロー映画まわりのニュースや気になった噂をセレクト、解説付きでお届けします!
今日は『シャザム!~神々の怒り~』についての解説です。(以下、ネタバレあり)
『シャザム!~神々の怒り~』が公開されました。2019年の『シャザム!』の待望の続編です。“待望の”と書かせていただいたのは、前作は本当に好きな人が多く、とても愛されているアメコミヒーロー映画の一つだから。『シャザム!』の魅力はなにか? 本作はマントを着たマッチョの超人という典型的なヒーローの活躍を描きながらも、普通のヒーローものとは一味違うテイストなんです。それはどういうことか?
『シャザム!』はヒーローもののフォーマットを借りた、少年少女のファミリードラマなのです。例えば『E.T.』を“SFエイリアン映画”と呼ぶことはできますが、あの作品の本質は子どもたちの成長と冒険を描いたジュブナイルですよね。同じような意味で『シャザム!』も少年少女の絆の物語が主で、そこにスーパーヒーローという要素を絡めた構成になっています。
魔法使いに見いだされた孤児のビリー少年は「シャザム!」という言葉を唱えると、スーパーマン級の超人に変身することが出来るようになります。ビリーには血のつながらない姉・弟・妹がいますが(彼らも皆孤児であり、優しい里親の元、一つ屋根の下で暮らしている)、この子たちもビリーから不思議パワーをわけてもらい呪文で変身できるようになりました。かくしてビリーを筆頭に6人の少年少女は、ホームタウンであるフィラデルフィアで事件が起こると、「シャザム!」のかけ声とともに変身。ヒーローとして活動します。
ヒーローになった時は肉体的には子どもから大人に変わります。 “のび太がケンシロウ”になるレベルの変身です。しかし心の中は子どものままなので、そのギャップが面白い。このアイデアは元のコミックの発明ですが、映画自体もトム・ハンクスの『ビッグ』(主人公が一晩で子どもから大人の男になってしまうファンタジー)をお手本にしたと言われており、 “中身はコドモ、外見は大人”の楽しさが強調されています。
なので少年時とヒーロー時は違う役者さんが演じていて、例えば主人公の少年ビリー役はアッシャー・エンジェル、変身してからはザッカリー・リーヴァイが演じています(ただし今回、女性ヒーローのメアリー役のグレイス・キャロライン・カリーだけ、人間モードと変身モードの両方を演じています)。
ここで重要なのは元々“シャザム”というのはヒーロー名ではなく変身の呪文のこと。『シン・仮面ライダー』を『変身!』というタイトルで公開するようなものです。だからドウェイン・ジョンソン主演のヒーロー映画『ブラックアダム』の中で、ジョンソン演じる主人公も「シャザム!」と叫んで変身します。コミックではビリーが変身する超人とブラック・アダムはライバルなので同じ呪文なのです。
そして、この呪文の意味ですが、シャザムはSHAZAMとつづる。それは、
Solomon(ソロモン)の知恵
Hercules(ハーキュリー/ヘラクレス)の剛力
Atlas(アトラス)の体力
Zeus(ゼウス)の全能
Achilles(アキレス)の勇気
Mercury(マーキュリー)の速さ(俊足)
であり、これら6人の神・英雄の力を身に付けたヒーローというわけです。
ちなみにブラック・アダムの呪文“シャザム”はSの部分がエジプトの神シューに由来するなど、エジプト神話系の神々の力で構成されています。
というわけで、このヒーローは神様に由来するわけですが、そこで今回の副題“神々の怒り”がポイントになってきます。そう! 神の力を持つビリーたちに対し神々がなぜ怒るのか? それは意外や意外、ビリーたちが得たこのスーパーパワーは神様が人間に授けてくれたものではなく、なんと! 神様から人間が奪ったものだったんですね! というわけで神々の中の一人であるアトラスの3人の娘たちが「父親から奪ったパワーを返せ!」とばかりにビリーたちに迫ってくる。しかも次女は人間そのものが嫌いで、これを機に人間界を滅ぼそうとする。かくしてビリーたち6人のヒーロー家族VS3人の神の娘となるわけです。
この3人娘を演じるのが長女ヘスペラ=ヘレン・ミレン、次女カリプソ=ルーシー・リュー、そして三女アンテア=レイチェル・ゼグラー(『ウエスト・サイド・ストーリー』のマリアで実写版『白雪姫』の主役)という豪華キャスト。
ヘレン・ミレン演じるヘスペラに対し、ザッカリー・リーヴァイ演じるヒーロー版ビリーが戦う家族の代表例として『ワイルド・スピード』シリーズに言及するシーンはありますが、これはヘレン・ミレンが『ワイスピ』に出ていることを知っていると笑ってしまいます。
前作のバトルの見せ場は7つの大罪に由来する魔神たちとの戦いでしたが、今回は次女カリプソの奸計によってフィラディルフィアの街に神話の怪物たちが解き放たれ、『ザ・ミスト』のような状態。さらに巨大なドラゴンが迫ってきたりと、バトルシーンもスケールUP! モンスターの描写や神々の娘たちが人間を襲う場面はちょっと怖いのですが、前作・本作の監督デヴィッド・F・サンドバーグ監督がもともと『ライト/オフ』『アナベル 死霊人形の誕生』等のホラー映画畑の人ということも影響しているのでしょう(前作同様、『死霊館』シリーズのアナベルちゃん人形も出てきますよ。あと劇中、フルチという看板が出てきますが、これはイタリアの傑作ホラー『サンゲリア』の監督ルチオ・フルチへのオマージュだそうです)。
しかし、そこは「シャザム!」シリーズ。どんなに話が大きくなろうとも、敵が恐ろしくなろうとも前作の楽しさは健在。とにかくビリーを中心とする子どもたちのユーモラスなやりとりが素敵です。なによりも本作は家族の物語。ここがホロっとさせられます。
前作のビリーは血のつながった本当の母親に固執するあまり、里親や他の孤児たちに心を開きませんでした。しかし様々な試練・冒険を通じて、血よりももっと大事な絆で彼らと結ばれ、本当の家族となります。けれどこの2作目は、今度はビリーの家族愛が強すぎて、結果、他の子たちを拘束してしまう事態に陥ります。前作とは対照的なビリーの態度で、家族とはなにか? どうあるべきか? というテーマがまた深く描かれています。
よくできたジュブナイルとしてまたしても胸を打たれたのですが、今回はラストの方であるスーパーサプライズがあって、ここはDCヒーロー映画として胸が熱くなりました。ワンダーウーマン登場です! 物語の前半の方で、後ろ姿だけ映るので、これは前回のスーパーマンのカメオ同様(この時も首から上は、つまり顔は映らない)、チラっとしか出ないパターンかと思ったのですが、ラストにしっかり出番がありました。そう! ワンダーウーマンはゼウスの娘なので、彼女も神なんですよね。