『シャザム!~神々の怒り~』がうったえるヒーロー作品の本質 一方で体制変更の影響も?

『シャザム!』続編が受けた体制変更の影響

 映画『シャザム!』が、およそ4年ぶりに続編として、スクリーンに帰ってきた。単純なほどにストレートな物語だが、見た目は大人なのに子どもじみた行動をするヒーローの意外性や、明快で楽しい内容が話題を呼び、すぐに続編の製作が決定されるほど、第1作は大きな成功を収めることになった。

 そして、このほど第2作『シャザム!~神々の怒り~』が、ついに公開されたが、果たしてその出来はどうだったのだろうか。ここでは、作品の評価とともに、現在のワーナー・ブラザース(ワーナー・ブラザース・ディスカバリー)によるDCヒーロー映画の状況を含めて、包括的にこの公開について考えていきたい。

 結論から言うと、本作『シャザム!~神々の怒り~』は、前作同様に充実した作品だった。近年多く製作されているヒーロー映画のなかでも、人命救出や強大な敵とのバトル、ほろりとさせる人間ドラマや、随所に笑えるジョークが盛り込まれた、王道といえる楽しみ方のできる娯楽作品の一つとして完成されているといえるだろう。観客の予想を大きく超えるような要素がないところが惜しいものの、前作の成功から期待されるものを手堅くまとめ上げ、万人に好まれるポップさを獲得している。まるで1980年代に隆盛した、ファミリー向け娯楽大作を想起させるところがある。

 前作の評「『シャザム!』なぜ心震わせる作品に? 人間ドラマによって生み出される真のヒーロー像」でも書いたように、本作の原作となった、もともとのコミックのタイトルとヒーロー名は『キャプテン・マーベル』だ。マーベル・コミックのコミック作品『キャプテン・マーベル』よりも先に生まれているが、混同を避けるため、その呼称は現在では封印されるようになった。今回の映画でも、最後までそのヒーロー名は伏せられていたため、前作同様にそのこと自体がネタとして活用されている。

『シャザム!』なぜ心震わせる作品に? 人間ドラマによって生み出される真のヒーロー像

まさにヒーロー映画全盛といえる昨今、とんでもない悪ふざけをするヒーローが登場した。筋肉ムキムキの大人の男でスーパーパワーの持ち主…

 本作の主人公は、もちろん前作に引き続き、「シャザム!」と唱えると強大な神のパワーを備えたスーパーヒーロー(ザッカリー・リーヴァイ)に変身することができるようになった少年ビリー・バットソン(アッシャー・エンジェル)。筋骨隆々のスーパーヒーローに変身するといっても、精神年齢や頭脳は子どものままで、調子に乗ってトラブルを引き起こしてしまうという、コメディ調のストーリーやキャラクターの面白さが際立っていたのが前作だった。もちろん、その魅力は本作にも受け継がれているが、ブランクの数年間は、キャストの子どもたちにとって著しく成長する時期であり、久々に会った親戚の子どものように、ビリーや親友フレディら、新たにヒーローチームとなった登場人物たちは大きくなっている。

 本作では、その変化にともない、ストーリーのなかでも主人公たちを成長させている。里親のもとで暮らしているビリーは、助成金が途絶えることを懸念し、独立して家を出ることを考える時期にきていた。同時に、人助けをするヒーローとしての手腕や責任感が、まだまだともなっていないチームは、地元フィラデルフィアの新聞に「恥」とすら書かれている始末。まとめ役を務めるビリーは、自分には強大なパワーが相応しくないと感じ始めていた。

 そんなときに現れる、本作のヴィラン(悪役)は、ヘレン・ミレン、ルーシー・リューらが演じる、根源的なパワーを持った“神々の娘たち”。女性のヴィランとして威厳に包まれた彼女たちは、自分たちの血族である神々の力を奪ったとされるビリーたちに復讐を果たそうとする。だが、ビリーたちが若さゆえの軽薄な対応を続けてしまったことで、彼女たちをさらに怒らせる結果になるという展開が笑えるところだ。

 本作の焦点は、ヒーローとしては精神的に半人前なビリーが、“神の力”に相応しい内面を獲得できるかどうかという部分だ。それを最も大きく促してくれるのが、里親たちの献身的な態度である。ビリーは、真に尊敬できる大人に出会い、大きな愛情を分け与えられ、家族や他者を助けることを学んだことで、真のヒーローへと成長する。

 つまり、真に英雄的な存在とは、持っている力の大小ではなく、他者を救おうとする精神を持った者だということだ。そのように考えれば、誰もがすぐにでもヒーローになることができる。親しみやすいヒーロー映画『シャザム!』シリーズだからこそ、そんなヒーロー作品の本質部分を、観客の心に強くうったえかけることができるのである。

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